新型炉への過信もあった。

 「AP1000は従来の原子炉に比べてポンプやバルブの数を減らし、コスト競争力が高い」。

 当時の東芝の資料でも従来の原子炉に比べてAP1000は、安全系配管が80%削減、ケーブルが70%削減、安全系バルブが50%削減できると説明している。

WHの新型炉「AP1000」は、従来の原子炉に比べて配管やケーブルが少なくて済むことを強調していた(2009年当時の資料)

 だが、現実には新技術の導入で苦しみ、コスト競争力があるとは言えない状況になっている。(3月13日配信記事「東芝存続には、WHの“破産”以外に道はない」参照)

 AP1000は複雑な設計となっているため、溶接などの施工で手間取っているのだ。

米国の溶接士の平均年齢は52歳だった

 志賀氏は建設の難航を予想させるような懸念も話していた。

 「建設現場では作業長、スーパーバイザーが重要だ。中国や米国での経験がある人が、世界中の建設現場に行く予定だ。その人に多くの人がぶらさがるが、キーパーソンは限定されており、そのノウハウを水平展開する。中国の建設現場には米国人が行っており、その人には世界を渡り歩いてもらう」

 「米国の溶接士の平均年齢は52歳。若い人を育てていくのが重要なので、昨年米国の溶接会社を買収し、ノースカロライナ州に教育センターを設立した。自動溶接機を導入するが、それでも人手が必要な作業工程は多い」

 溶接の技術が伝承されておらず、これが建設の遅れる要因の1つとなっている。

強気の受注計画を立てていた

 志賀氏は原発市場を極めて楽観的に見ていた。「2015年までにAP1000だけで33基を受注し、製造は年間4基体制を予定している。中国の原発は2013年に、米国のそれは2016年に稼働する」

 「今後、燃料供給のシェアを伸ばしていきたい。電力会社はBWR(沸騰水型軽水炉)とPWR(加圧水型軽水炉)の両方を持つ場合があるので、東芝グループとして両方をワンストップで請け負いたい。2015年に今の3倍の1兆円を超える売上高になり、その半分は燃料供給・サービスの売上高が占めるだろう。その後は全体で3兆円を目指す」と続ける。

 実際は2015年までに受注して建設中なのは8基、2015年度の売上高は約7300億円にとどまっている。今や3兆円というのは荒唐無稽だ。