2009年、ウエスチングハウス(WH)の副社長だった志賀重範氏(左)。WH本社で幹部とコミュニケーションをとっていた。その後、志賀氏は同社の社長と会長を歴任する

 しかし、この頃から東芝の原発事業は泥沼に入り込む。4基の受注直後から米当局の規制強化に苦しめられるなど、誤算続きとなる。インタビューから浮かび上がってくるのは、志賀氏の原発事業に対する過信と楽観主義、そしてWHへの遠慮だ。

東芝は40カ月以内で「確実に」建設できる

 「東芝は建設期間を短くするノウハウがある」。

 インタビューの中で志賀氏が最も強調していたコメントだ。東芝の原発技術に対する揺るぎない自信を披露し、定量的な建設計画を説明した。

 「米国では1979年のスリーマイル島の事故以前は80カ月で原発を建設していた。東芝は40カ月以内で確実に建設できる。AP1000(WHの新型原子炉)ではゆとりを持たせて48カ月の契約にしているが、技術的には36カ月で建設できる」

 自信の裏付けは日本での豊富な実績である。スリーマイル島の事故以降、米国では新規受注がないのに対し、東芝は1960年代から継続して原発を建設し、ノウハウを蓄積してきた。

 しかし、現実は甘くなかった。

 まず、着工までに時間がかかった。米原子力規制委員会(NRC)が、AP1000の安全性などを厳しく審査したためだ。

 2013年から建設工事を始めたが、完成は2020年の予定と80カ月近くかかる。志賀氏が「確実に」と言っていた建設期間の2倍だ。

 しかも現時点では2020年までの完成さえも危ぶまれ、さらに損失が雪だるま式に膨らむことが懸念されている。米電力会社とリスクの大きな契約を結んでしまったのも、自社技術への過信が影響していたのかもしれない。(2月16日配信記事「東芝の“思い上がり”が生んだ原発「無限責任」」参照)

 米国だけの問題ではない。「中国では三門と海陽で2基ずつの建設が始まっている。WHを買収した際は仏アレバと競っていたが、2007年に落札。2009年に着工し、2013年に燃料を充填し稼働する予定だ」

 志賀氏がこう語るように、三門は予定通り2009年に着工したが、未だに稼働していない。中国ではAP1000の設計に疑問が投げかけられ、工事の長期化に苦しんでいる。

 一方、別方式では中国で2012年に着工して2016年に稼働した原発もある。

スリーマイル島の原発事故以降、新規受注がない米国に対し、東芝は日本での豊富な建設実績を強調していた(2009年当時の資料)