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欧州委員会の反発をどう読むか

 一方、EUも反発している。対抗措置として報復関税のリストまで公表した。「ハーレーダビッドソン」などのオートバイ、バーボンウィスキー、ジーンズなど、それぞれ米国議会幹部の地元の産業を狙い打ちにして、政治的に揺さぶろうとしている。これにはトランプ大統領も欧州車への関税引き上げで対抗することをちらつかせて応酬している。

 ただし、これもポーズだけに終わる可能性が高い。さすがに欧州委員会の威勢のいい報復関税案には、トランプ政権への反発が根強いドイツでさえ、対抗措置の応酬となることを懸念して反対を表明したのだ。EUでは、存在意義を示したい欧州委員会と産業を抱える加盟国の間で立場の違いがあり、今後、綱引きが予想される。

 日本にとっても、中国のみならず、EUまでもが対抗措置の応酬に参戦するという事態は最悪である。巨大な国内・域内市場を持った大国同士がパワーゲームを展開すれば、日本のような国内市場の規模では伍していけない(関連記事:トランプの鉄鋼輸入制限で米中貿易戦争が勃発?)。世耕経産相もEUに対して、報復措置ではなく、あくまでもWTOに提訴するなど、日本とともに自由貿易のルールの下で冷静に歩調を合わせるよう、求めたようである。

 恐らく、対抗措置を振りかざすEUの強硬姿勢も、構えを見せるだけのポーズにとどまる可能性が高いだろう。

日米欧三極会合の持つ意味は大きい

 他方、世耕経産相は米国のライトハイザー通商代表に対して、トランプ大統領の関心が選挙に傾いていたとしても、鉄鋼問題の本質を踏まえて大局を見失わない対応をするよう、求めたようだ。

 鉄鋼問題の本質は、世界の鉄鋼の半分以上を生産する中国の過剰生産である。その中国の過剰生産の根本問題に対しては、昨年11月に「鉄鋼グローバル・フォーラム」の場で、中国を含む33カ国・地域が協力して解決に取り組むことで合意している。中国を取り込めたのは日米欧が連携して中国を追い込んだ成果だが、今回の米国の輸入規制によって逆に米国が孤立してしまい、中国とEUが米国に対峙するという構図になりかねない。

 そうした構図になると、鉄鋼問題が「中国問題」から「米国問題」にすり替わって、中国を利する結果になってしまう。中国の過剰生産問題を解消するには、米国にそのことを理解してもらわなければいけない。

 そこで重要な意味を持つのが、日米欧三極の閣僚会合だ。

 中国の補助金による貿易歪曲的措置が鉄鋼の過剰生産能力につながっているとして、日米欧が共同でWTOに提訴する協議を進めている。そうすることによって米国を何とかWTOに繋ぎ止めようと必死だ。

 世間の注目は日本が米国の鉄鋼規制から除外されるかどうかに注がれているが、世耕経産相の使命は日本を対象から除外させるだけではない。米欧それぞれが「真のターゲットは中国だ」という大局を見失って対立しないようにすることだ。そのためにも、三極閣僚会合がこれからもカギを握る。鉄鋼問題そのものだけでなく、まさにWTOをはじめとする経済秩序を維持できるかどうかの正念場なのだ。