メールの結論は冒頭2行

 さらに、16年からは職場単位のワークショップで働き方改革を進めてきた。品質保証部でも「メールの結論は最初の2行にまとめる。挨拶は抜きにして本題に入る」などの決まり事を設けている。ワークショップでは部長から若手までが平等な立場で意見を交わす。

 ブームとなりつつある「金曜早帰り」。アステラスは数年がかりで組織に定着させ、併せて結婚時同居支援や在宅勤務などの多様な働き方を認める制度を取り入れてきた。17年3月期は3期連続の増益を見込むなど業績も堅調。もともと低かった離職率は10年の2.2%から16年には1.1%に改善した。早帰りを掛け声倒れに終わらせないためには、全方位での取り組みが欠かせない。

*=一定の条件を満たした場合、配偶者と同居できる地域への異動を認める制度

(上木 貴博)

残業減の即効薬は1つにあらず

 どうすれば残業を減らせるか──。

 日本労働組合総連合会(連合)が実施した現場社員1775人に対する調査では、「適正な人員配置」が1位に挙がった。

 残業が多い職場で社員を増やせば各自の負荷は減るはずだ。だが、その業務に特定の技術や資格、経験が必要な場合、担当者は簡単に増やせない。人手不足が顕著な昨今、人員補充はそもそも難しい。2位以下が団子状態なのは残業を減らす正解は1つでないことの証左だ。

 アステラスでも労働時間の実態把握に力を入れている。本人が申請した労働時間と実態との乖離であるサービス残業は業界を問わず問題視されてきた。経営目標として取り組むなら、業務改善サイクルの起点は正確な数値の把握のはずだ。

 総務省が2月中旬に発表した労働力調査では、16年の転職者数が前年比8万人増の306万人となり、09年の320万人以来の大台回復となった。今後、優秀な人材の囲い込み策として「金曜早帰り」が広まる可能性がある。

 製薬業界ではアストラゼネカ日本法人も昨年3月から毎週金曜午後4時の退社を奨励する「ハッピーライフフライデー」を導入。それまで21時間だった月間平均残業時間を19.3時間に減らした。長時間残業にメスを入れない企業は、人材の“草刈り場”となるリスクを負うことになる。

全社的なカイゼン活動が欠かせない
●「どうすれば残業を減らせると思うか」への回答
全社的なカイゼン活動が欠かせない<br /> <span>●「どうすれば残業を減らせると思うか」への回答</span>
注:3つまで複数回答が可能
出所:日本労働組合総連合会
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