女子高生が帰宅すると、自室のスピーカーに向かって「クローバ、何かオススメの音楽」と語りかける。するとスピーカーが「癒し系のプレイリストを再生します」と反応して音楽が流れる。

 所変わってバスの車内。スマートフォンで音楽を聞いていると、LINEに届いた「原宿に集合」というメッセージが音声で読み上げられ、「スタンプで返信しますか?」と質問してくる。男性がスマホのカメラに向かって頷くと、男性がいつも使っているスタンプが仲間へ送られた。

LINEが今夏に発売するスマートスピーカー「WAVE(ウェーブ)」。語りかけると、AIの「Clova(クローバ)」が様々な情報や機能を返してくれる(LINEのプロモーションビデオから)

 これはLINEが発表したAI(人工知能)プラットフォーム「Clova(クローバ)」による近未来を示したビデオの一節。3月、LINEは米グーグルやアマゾン・ドット・コムといった列強にAIで立ち向かっていく姿勢を明らかにした。

 LINEのルーツは、韓国インターネット大手、NAVER(ネイバー)の日本法人。一度撤退した後に再進出し、2012年に投入したスマホ向けアプリ「LINE」を大ヒットに導いたのが第2の創業だとすれば、このクローバはポスト・スマホ時代を睨み「第3の創業」を狙ったプロジェクトだと出澤剛社長は語る。

 「議論を始めたのは昨年の上場直後。初心に返って、もう一度、LINEのような大きなサービスやプロダクトを生み出す必要性を感じていた。この業界はイノベーションが停滞した瞬間に厳しい局面を迎えてしまう。何か新しいことをやらないと、次の成長はない」

LINEの出澤剛社長(右)とクローバをけん引する舛田淳取締役CSMO(左)が第3の創業への意欲を語った(撮影:的野弘路)

普及前夜の最適なタイミング

 LINEが発表したクローバは、あらゆるAI関連サービスの「ハブ」となるクラウドの頭脳。ユーザーが発した言葉やジェスチャーなどを理解し、最適なコンテンツやサービス、スキル(機能)を提供する。

 まずは初夏、「音声アシスタント」を搭載したスマートスピーカー「WAVE(ウェーブ)」を日本と韓国でリリース。ユーザーが人と会話をするようにウェーブに話しかけると、天気やニュース、LINEのメッセージといった情報を返してくれる。音楽の再生や家電の操作なども順次、可能にしていくという。

 この音声アシスタント、欧米ではポスト・スマホ時代のキラー・デバイスとして既にブレークの兆しが見えている。

2015年に米国で発売され、500万台以上を出荷した米アマゾン・ドット・コムのスマートスピーカー「Amazon Echo(アマゾンエコー)」

 けん引するのはアマゾン。円筒形のスマートスピーカー「Amazon Echo(アマゾンエコー)」に語りかけると、「Alexa(アレクサ)」と呼ばれる音声アシスタントが各種情報を返し、音楽再生や家電操作もこなしてくれる。2015年の発売以来、欧米で500万台以上出荷され、対応するアプリや家電などの数は1万を超えた。

 ホームコントロールのプラットフォームを握らんとするエコーの躍進に焦ったのか、グーグルも昨年秋、スマートスピーカー「Google Home(グーグルホーム)」を投入。エコーと同様の機能で猛追する。さらにアップルも昨年秋、家電などの操作が可能となる音声アシスタントの機能をiOSに実装するなど、にわかに盛り上がりを見せている。

 そして、LINEもこうした市場への参入を表明した。果たして、アジアに根を張るLINEに勝ち目はあるのか。LINEの首脳は、まさにこの「前夜」の状況こそが、最適なタイミングだと自信を見せる。