東芝のフラッシュメモリー事業売却を巡り、争奪戦が激化している。台湾の鴻海精密工業が名乗りを上げる一方で、安全保障を懸念する声も。複数の半導体メーカーが候補として取り沙汰されるが、協議は難航しそうだ。

鴻海の郭台銘董事長はシャープに続き、東芝の半導体も手中に収めることができるのか(写真=伊藤 真吾/アフロ)

 台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が、東芝のフラッシュメモリー事業の買収に名乗りを上げた。郭台銘董事長は3月1日、中国で記者団に対して「真剣に検討している」と述べ、強い意欲を示した。

 東芝はフラッシュメモリー事業の完全売却も視野に、3月中にも入札を始める予定だ。2017年度の早い段階でめどをつけ、1兆円規模の売却益を得ることを目指す。

 これまでは米ウエスタンデジタル(WD)や韓国SKハイニックスなど、競合の半導体大手が候補として取り沙汰されてきた。世界シェア2位の東芝を手中にできれば、業界秩序は激変する。一方で、各国の独占禁止法をどうクリアするかが課題となっていた。事業の重複が少ない鴻海が争奪戦に参入したことで、買収合戦が熱を帯び始めた。

 だが業界からは「鴻海は無理筋だ」との声が上がる。その根拠は、フラッシュメモリー生産拠点の四日市工場を東芝と共同運営するWDの存在だ。

 東芝とWDは設備投資を折半するだけでなく、次世代製品の技術開発でも提携している。WDの幹部は「誰が東芝から株を買おうとも、我々を無視して工場をコントロールすることはできない」とくぎを刺す。

 WDを巡っては15年、中国の半導体大手が同社への出資を検討したが、米国の規制当局が横やりをいれて頓挫した経緯がある。最先端の半導体技術は安全保障に直結するためだ。IHSグローバルの南川明・調査部ディレクターは「鴻海は中国政府と近すぎる。東芝が鴻海に売却することを、WDが認めないだろう」と指摘する。