
「住人が亡くなった後に取り壊すことはよくある。維持するのもお金がかかって大変だから、潰して駐車場として貸し出す場合も多い」。
こう話すのは京都市内の瓦業者の男性だ。男性は仕事柄、京都の伝統的な家屋である「京町家」の屋根を修繕することも多い。だが近年、京町家の減少を肌で感じるという。男性自身も、「10年ほど前に父親が亡くなり、住んでいた町家は取り壊してしまった」。
伝統的建築物として価値の高い京町家だが、近年その数が減少し続けている。京町家の定義は一定ではないが、京都市の定義では、建築基準法が施行された1950年以前に建築された木造建築物で、平入りの屋根や坪庭といった特徴を有する。
京都市は2008~10年に市内中心部に4万7000軒の町家があることを確認した。だが、16~17年に追跡調査を実施したところ、約5600軒の町家が消滅していた。さらに残存している町家でも、1割以上が空き家ということが分かった。
町家減少の原因としては、高齢化による住人の減少や、後継ぎ不足が挙げられる。さらに、リノベーションで改善できるとはいえ、冬の冷え込みが厳しいなど住居としては不便な点も多い。町家の修繕をできるような職人が減っているといった問題もある。
維持するにしても改装するにしても費用がかかり、個人の努力には限界がある。
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