パナソニックは春田氏に何を求めていると考えていますか。
春田:家電の世界でのしがらみがない意見を求められているだろう。DeNAでプロ野球に参入する時もそうだったが、業界にどっぷりと浸かっている人は、暗黙のルールに乗っ取って「これはできません」と言いがちだ。僕は過去のしがらみを気にしないので「そんなん知らんし」と言っちゃう。これって結構重要だと思っている。新会社でもいろいろ言って巻き込んでいこうと思う。
深田:パナソニックの家電事業をお願いするわけじゃない。今までにはない家電を生み出そうとするときに今までのルールが成り立たなくなる。その中で春田さんのような視点が重要になってくる。いずれにせよハードウエア単品で価値を生むのではなく体験価値を重視することを期待している。

マインドセットを変えていく
ビーエッジでは、アイデアを出したパナソニック社員を新規事業会社に移籍させて事業の立ち上げに専念させる計画です。大企業出身者にスタートアップマインドは芽生えるのでしょうか。
春田:大企業の人たちが新規事業を起こす場合、会議を通すのは大変だ。とはいえ、企画書を書いて会議で耐え抜けば開発費がもらえる。これに対してスタートアップの経営者は全然違う。預金通帳とにらめっこしながら、日々戦っている。従業員を雇う人件費や電気や水道などの光熱費、机や椅子などの設備投資など大企業なら考えなくていいところから考えている。こう比べると大企業の社員は、肌感覚としてお金を使っているという意識が少ないかもしれない。
極端な話をすれば、スタートアップを立ち上げると自分の給料を自分で決めることになる。起業経験者はわかると思うが、絶対に大企業にいる時よりも低く設定することになる。もちろん成功を収めたらリターンは大きいのだけど。
新規事業を成功させるには、まずはマインドセットから変えていく必要がある。スタートアップとのマインドの差は大きい。アセット(資産)だけで見れば、大企業はスタートアップに負けるはずはないのだから。逆に言えば、パナソニックがすでにそういう集団になっていれば今回の新会社は設立されなかったかもしれない。
最後の質問ですが、新会社の目指すゴールは何になりますか。
春田:まずはビーエッジからの出資で事業会社を立ち上げる。その後、大きくなると追加出資していく。パナソニックでもスクラムでもかまわないと思っている。ある程度事業が成長したタイミングでパナソニックが買い取るのが理想だ。そういう選択肢が増えれば社内のチャレンジも増えるはずだから。そうならないなら上場や売却など外部の資金で成長していく可能性もあり得るだろう。
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