EUがGDPRによる権利保護を推し進める背景には、利便性と権利保護のバランスを1社でコントロールできるほどの「データ寡占業者」への警戒感があるとみられる。世界中に情報の根を張っている米国の「GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)」だ。
しばしば批判にもさらされるGAFAだが、その情報資産はビッグデータを活用したい企業に取ってみれば垂涎の的だ。膨大な会員データやウェブサイトの閲覧履歴が統一されたフォーマットの中に納められ、その引き出しや分析のためのアプリケーションも整っているからだ。
ビッグデータによるマーケティング支援を手掛けるフロムスクラッチの武田卓哉執行役員は「一方、日本では、同じ会社内でリアル店舗とEC(電子商取引)サイトのデータの項目が揃っていないなどお粗末な状況で、すぐに情報を他社に売買できない会社は多い」と指摘する。GAFAに並ぶ情報量を得ようとすれば違う企業同士のデータを統合することになり、フォーマットの統一にさらに大きな労力がかかる。データという商品の魅力において、米国との彼我の差は大きい。
そこで、武田氏は「日本はデータの正確性で勝負していくべきではないか」と指摘する。例えばECサイト内のアクセス履歴について「日本はミス無く100%の収集を目指そうとする真面目な技術者が多い」という。
実際にデータの正確性が成果を得た事例もある。東京工業大学の元素戦略研究センターは、ビッグデータ解析により新物質の組成を探し出す「マテリアルズインフォマティクス」を利用し、希少元素を使わない赤色発光する新たな窒化物半導体を開発したと発表した。細野秀雄センター長によると、マテリアルズインフォマティクスは米国が主導して開発が進んだ技術だが「実際に有望な新素材を生成できたのは初めて。日本が歴史的に緻密な研究データを積み重ねてきた成果だ」という。
改正個人情報保護法の施行により「ビッグデータ元年」となる今年は、日本が今後のデータ社会での勝ち組になれるかを占う分かれ目でもある。日本独自の強みを発揮する方法を探らなければ、日本は他国からデータをもらえず、データの買い手も少ない。データ開国への道はまだ遠く険しい。
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