ネットで自由に聞き返せるとか、自分の住んでいない地域の放送も聞けるとか、ここ数年で新たな聴取方法が登場したことにより、番組づくりが変わってきた事例はあるのでしょうか。

入江:いや、大きくは変わっていないと思いますよ。まだやはり普通のラジオで聞いてくださっているリスナーのほうが母数としては多いですから。「radikoで聞くから」「ラジオクラウドで聞くから」という理由で全面的に企画・編成を変えた例は、まだ目立ったものはないです。

 ただ、やりようによっては面白いことが色々できるかもしれないとは思います。放送後も繰り返し聞けるわけですから、たとえば1回聞くだけでは分からないけど、2回じっくり聞くと面白いみたいな番組は良いかもしれません。難解なラジオドラマとか、凝った番組が出てきても良い。番組づくりというのはお金も手間もかかりますから、今までのように1回しか放送しない前提では作れないけれど、これからはそうじゃない、難しくても理解してもらえるということを意識したコンテンツが生まれる可能性はあります。

ラジオから、リアルタイムの要素は減っていくのでしょうか。

入江:いえ、リスナーと同じ時間軸を共有するのはラジオの基本ですので、それはそれで絶対に残すべきだし、それがなくなると、たぶんラジオ的なポータブルなメディアは生き残れないと思います。ただし、その中の一部として、聞き返せる機能を面白がった企画が要素として入ってくる可能性はあるということです。

「心に刺さる」音声コンテンツの強み

ラジオがスマホのアプリの一つになって存在が認知されるようになった、というお話がありました。けれどスマホにはニュースアプリもあれば動画アプリも入っている。ゲームだって楽しめます。ラジオのライバルがかつてなく増えるなか、改めて、音声メディアの強みはどこにあるとお考えですか。

入江:やはりラジオが基本的にはマンツーマンのメディアであるということに尽きます。深く、心の中、気持ちの中に浸透するメディアであるということです。

どういうことですか。

入江:テレビ番組では司会の人が「みなさん」って呼びかけますよね。ラジオは「あなた」とか、あるいはハンドルネームで個人に話しかける。リスナーのみなさんも、パーソナリティーが自分に話しかけているような感覚になっているのではないでしょうか。

 これは科学的に何か言えることがあるわけではありませんが、やっぱり声がもつ情報量ってかなり多いと思うんです。たとえばアニメというのは、登場人物でも背景でも、絵は作りものであっても違和感なく理解できます。けれど声というのはまだまだ生身の人間が声優を務めないと成り立ちません。

 声は情報量が多く、気持ちにダイレクトに訴えかけてくる存在。だからこそ、ラジオというのは一旦ハマると皆さんに愛してもらえるメディアだと思うのです。だから見てくれは古くさいかもしれませんが、付き合うと良いヤツ、みたいな。ネット時代だからこそのラジオの価値を探っていきたいと考えています。

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