TBSラジオの業績をみると、この10年だけで売上高が50億円、全体のうち3割が消失しました。落ち込みの要因は何でしょうか。

入江:ほとんどが広告収入です。電通がまとめている「日本の広告費」によると、ラジオ業界全体の広告収入は、ピークだった1991年で2400億円を超えていました。それが、いまは半分の1200億円強まで落ち込んでいます。TBSラジオは下げ幅こそ全体より緩やかですが、それでもやはり苦戦は間違いありません。

現在の売り上げ100億円強のうち、大部分が放送収入という認識で良いのでしょうか? 住宅展示場の「TBSハウジング」は、TBSラジオの多角化事業ですよね。放送以外の事業は、どれくらいの規模があるのでしょうか。

入江:そこそこあります。

数十億円の単位で。

入江:数十億までいかないけど、4分の1くらいはありますかね。ただ、そちらはどちらかというと増収基調にあります。

すると50億円の減収はやはり、放送収入の落ち込みによるということですね。

入江:そうですね。

広告収入を取り戻せず、苦戦が続いている
●TBSラジオの売上高と営業損益の推移(単位億円、16年度は予想)
広告収入を取り戻せず、苦戦が続いている<br />●TBSラジオの売上高と営業損益の推移(単位億円、16年度は予想)
TBSラジオの業績推移

売り上げは減りましたが、営業損益を見てみると、売上高が今より5割多かった2006年前後と遜色ないレベルにまで戻しています。

入江:それは筋肉質になるべく、費用コントロールを頑張っていますから。

リーマンショック直後は赤字になりました。

入江:そこだけは下期から急激に(広告需要が)落ちこんだので、対応できなかったのです。製造業のように「売れないなら作らない」とできればいいのですが、放送は広告がつかなくても流し続けないといけないので……。

下がって良いわけではないが、上向くわけでもない

今後、事業としては現状を維持していくのでしょうか。それとも、もう一度、右肩上がりの時代がやってくるのでしょうか。

入江:それはまだこれからの話ですから、なんとも言えません。でも、このままで良いとも思っていません。ちなみにラジオ業界の放送収入については、民放連が中長期の予想を出しています。そこで予測されている未来は、あまり明るいものではありません。

つまり売上高が100億円を割るのもやむなし、というような認識なのでしょうか。

入江:もちろん下がっても良いという話ではありません。ただ、民放連の予測でもどこかでぐっと上がっていくという話にはなっていないということです。

当面は、いかに維持していくか、と。

入江:それはそうですね。TBSラジオだけではなくて、各社とも厳しい放送収入の中でどうやりくりしていくかだと思います。少なくとも、私たちに今できることは経営を筋肉質にして、利益率を上げていくという地道な作業です。

 ラジオ業界としては、いま経営課題の順番を決めていこうとしているところです。まずは媒体価値を上げるというのが基本。ただ若い世代でもラジオ番組を聞けるようなインフラは整いつつある。そのうえでマネタイズをどうするか。これから考えていくことになります。

 まあ、でも、ターゲティング型広告が本当にうまく機能するようになったら、ラジオはもう劇的に変わると思いますよ。リスナーに聞いていただける番組が、素直に、そのまま媒体としての価値を生むわけですから。

リスナーに聞いていただける番組……ですか。結局はコンテンツの良し悪しが大切ということですね。当然といえば当然ですが……。

入江:はい。

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