ソフトバンクなどの名前を上げ楽観論を展開

 一方、我々が一番聴きたかった経済政策についてはどうか。はっきり言って、今まで彼が主張してきた以上のものは何も出てこなかったと言える。

 彼が演説で述べたことは、積極的な規制緩和を通じて米国に投資を呼び込むこと。新たな規制を1つ導入したら古い規制を2つ廃止する。自国の自動車メーカーや日本のソフトバンクなどの名前を列挙して、これからは国内外の企業が米国に投資してくれるとの楽観論を展開した。

 エネルギー関連では、オバマ政権時代に環境問題などで建設許可が下りず中断した、キーストーン・パイプライン計画やダコタ・アクセス・パイプライン計画を実行すること。しかも、自国で製造した鉄鋼製品を使ってパイプラインを建設することを強調した。

 通商面では米国から雇用を奪うTPP(環太平洋経済連携協定)への批判、WTO(世界貿易機関)に加盟後、多くの米国内工場を閉鎖に追い込んだ中国への“口撃”など、選挙期間中と同様に戦闘モードを色濃く出して、保護主義的なスタンスを強調したのが目立った。大統領就任演説でも訴えた「Buy American and hire American(アメリカ製を買い 米国人を雇う)」のが自分の基本原則だと中西部の有権者に受ける主張を再び繰り返した。

 マーケットが最も期待した税制度改革については「Big Big (tax) Cut(大々減税)」をやると大風呂敷を広げた。しかし、それ以上の突っ込んだ説明はなく、インフラ整備についても官民合わせて1兆ドルの投資をすると従来の主張を繰り返したに過ぎない。

 おそらく政権内部での意思統一がまだ出来ておらず、実務を担当する官僚人材の採用がままならないために、詳細を詰められていないのであろう。総論は威勢が良いが各論は寂しいという印象は否めない。

イランへの“口撃”が沈静化したのにはワケがある

 安全保障についてもNATO(北大西洋条約機構)への支援は続けるとしながらも、中東やアジア太平洋地域では同盟国の資金負担を主張。国際機関(国連やWTOなど)についても米国の権利を尊重すべきであり、自分は米国の代表だが世界の代表じゃないと、改めて「米国第一主義」を繰り返していた。

 トランプ大統領だけではなく、歴代大統領も施政方針演説や一般教書演説では外国への言及が極めて少なく、内政重視が特徴だ。中国については、米国から雇用を奪った国と批判したのは前述のとおりである。世界中でテロが蔓延するという下りでフランスとドイツに言及。イスラム教に触れた下りで、イスラム国(IS)の殲滅と、ミサイル実験を行ったイランへの制裁に軽く触れた程度だった。

 演説が国内の有権者を意識したものであることから、ある程度は想定内とはいえ、疑惑が晴れないロシアとの関係や、選挙期間中から標的にしてきたイランの核合意を破棄する件などには全く触れていない。ロシアとの不適切な関係についてはメディアも騒いでおり、議会での調査があるので敢えて触れないのは理解できる。しかし、イランへの“口撃”が沈静化しているのには理由があるように感じる。