「片道切符の覚悟でやってくれ」

 河合氏は高技能者として選抜されたメンバーを「何かあったら欧州でも米国でも支援に行ってくれ。良くしないと元の工場に戻ってこれないという“片道切符”の覚悟でやってほしい」と言って激励しているという。

 このような高技能者は塗装、鋳造、鍛造、成形といった各工程別に合計100人以上育成しており、今後も増やしていく予定だ。河合氏は年間で40~50人の高技能者を育成したいと考えている。

 「優秀な人間を集めて1年間にわたり侃々諤々の議論をさせると、自分はこんな部分が弱かったなど多くの気づきを得られて成長していく。世界でどこの工場に行っても活躍できる人材になる」(河合氏)。

 2017年1月2日で69歳になった河合氏。60歳になった頃には年金をもらって悠々自適で遊んで暮らそうと考えたという。しかし「持ってもらえないか。もう一度、現場を再強化してほしい」と引き止められた。その後、工場の現場をずっと歩いて見て回る中で危機感が高まっていったという。

 溶接は全部ロボットに任せており、現場のリーダーに「専門技能は何級だ」と聞くと「私はA級です」「私はB級を持っています」と答えるが、手作業で溶接をやらせると下手だった。自分ができなければ、溶接に問題があってもそれを見抜けない。

 ロボットはすごくきれいに溶接できるので「ロボットは溶接が上手いので大丈夫です」と答える責任者もいた。溶接は見た目がきれいでも強度が弱い可能性がある。反対側から力がかかったらボロッと折れないのか。

 ちゃんと接合できているかどうかを判断するには裏や表を見る必要がある。溶接した部分がどれくらい色が変わっているのか。本当に熱が伝わっているのかといった点は自分の手で溶接した経験がないとなかなか見抜けない。