今後は社外活動に注力

 「もともと3~4年を節目と考えていた」と語る村山氏。原油安や中国経済減速など外部環境が激変する中、トップを若返りさせ柔軟な発想で難局に当たるのが狙いという。自身はすでに業界団体などの要職に就いており、今後は会長として社外活動に注力。経営は金花氏に全面的に任せると明言した。金花氏は鉄道車両のエキスパートで海外駐在歴が長い。記者会見ではROIC経営を継承する姿勢を強調した。

 ざっくばらんでネアカな村山氏。経営改革に一定の道筋をつけ、3年できっぱりと退任する姿勢は潔い印象を受ける。「3年前のお家騒動が教訓となったのか」との質問に対して、「(経営統合が企業価値向上にはつながらないと考えた取締役が当時の社長を解任した)あの時はガバナンスが効いた。緊張感を持ちながら、明るくオープンにやってきた」と述べるにとどめた。ただお家騒動で醸し出された負のイメージは、今回の代替わりプロセスの正常化によって、いったん払拭された感がある。それは社長交代の大きな意義だ。

IHIは「会長兼CEO」で背水の陣

IHIは斎藤社長(右)が会長就任後もモノづくり再構築を主導(左が満岡次期社長)

 重工業界では川重の3日前、IHIも社長交代を発表したばかり。こちらは川重とは対照的な形での社長交代だった。4月1日付で斎藤保社長が会長に、満岡次郎取締役が社長に就任するのは想定の範囲内。ただし、斎藤氏は会長兼CEO(最高経営責任者)として、名実ともに実権を掌握し続けるのが注目点だ。一方、満岡氏は社長並びに、新設するCOO(最高執行責任者)を称する異例の人事だ。

 というのも、IHIは2016年3月期、海洋構造物の建造などに手間取った結果、3度にわたって通期業績予想を下方修正した「非常事態」にある。安定した工程管理や現場力など、モノづくりを全体的に再構築することが目下最大の経営課題に浮上しており、斎藤氏はその陣頭指揮を執ると再三強調。そのため一時的にせよ、経営戦略を担うCEOと、その実行役となるCOOを分離するのが有効だという。背水の陣であり、それだけ危機感が強いことを示している。

 会長兼CEOなる肩書はあまり一般的ではないものの、他の主要企業でも時たま見られる体制ではある。最終的に問われるのは、その権力構造によって、企業価値向上という目的を遂行できるかどうか、その一点に尽きる。

 出処進退は会社の置かれた状況、属人的な性格や信条が大きく影響を与えるだけに評価が難しい半面、興味深くもある。スパッと花道を飾る「村山流」に対し、最後まで問題の責任を全うしようとするのが「斎藤流」。春は企業のトップ人事が相次ぐシーズン。今年も様々な人間模様がありそうだ。