一人では生き残れないスバル

 自動車産業は今、「100年に1度の大変革期」(トヨタ自動車の豊田章男社長)と言われる激動の最中にある。トヨタのような大手ですら「CASE」(コネクテッド、自動運転、シェアサービス、電動化の総称)への対応に悪戦苦闘している。企業規模がトヨタの約10分の1のスバルが、単独でこの時代を生き抜くのは難しいと言わざるを得ない。

 会見で吉永氏自身もこの点に触れている。「中規模より小さい企業規模の自動車会社には、大きな会社とのアライアンスが大事になる。トヨタとの関係は大事にしたい」

 吉永氏が完全に退くことができない理由の一つに、このトヨタとの関係があると考えられる。吉永氏は、経営企画室に所属していた2005年、トヨタとの提携を取り付けた立役者の一人といわれる。2011年に自身が社長に就任してからも章男社長と親交を深め、翌年にトヨタと共同開発したスポーツカー「SUBARU BRZ」「TOYOTA 86」の発表にこぎつけた。

 この日、吉永氏がいつまでCEOを兼務するかの明言はなかった。だが、スバルが激動の時代を生き抜く方向性が付くまでは、新社長兼COOに就任する中村氏の伴走をするつもりのようだ。吉永氏が社長に就任した時もCOOの兼務で、当時の会長がCEOを務めていた。

 「役員会議でも話したが、ツートップのようになるつもりは全くない。中村さんに権限をどんどん渡して、邪魔にならないようにしたい」(吉永氏)

 トヨタと手を組みながらも次世代カーでどこまでスバルらしさを維持できるか。その成否は、ここ数年の新旧トップ交代にかかっていると言えそうだ。

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