日本の防衛産業の競争力低下に危機感を

 問題は、日本の防衛費が増大することによって日本の防衛産業からの調達が増えるのではなく、米国の軍事産業からの装備の調達が増えるということだ。日本の防衛産業の国際競争力が脆弱であることから、ここ5年間を見ても、米国からの調達が増えている。それにもかかわらず、日本の国内調達は減って、日本の防衛産業は縮小しつつある。

 このような傾向は今後、ますます強まっていくだろう。それこそトランプ政権が期待するところであり、米国の貿易赤字を減らし、国内雇用を生む実利につながるのだ。

 この問題に比べれば、米軍の駐留経費の負担増など微々たる問題だ。尖閣諸島への日米安保条約5条の適用も、米国のこれまでの政権のスタンスを確認したに過ぎない。これらの点で日本に対して「満額回答」で満足させたうえで、今後の布石を打って実利を取る。まさにしたたかな戦略だ。

 だからと言って、この米国の戦略に日本は乗るべきではないという意味ではない。北朝鮮や中国の動きを考えれば、日本自身の防衛力を高めていく方向性はやむを得ない選択であろう。国際情勢は緊迫しており、今後、防衛費の増大は避けて通れないだろう。

 日本としてはいかに防衛産業を強化していくかを真剣に考えることが急務であり、それなくしてはトランプ政権の思うつぼだ。

 「満額回答」に喜んでいるだけではなくトランプ政権の真の狙いを見極め、日本の防衛産業の競争力低下・弱体化という現実に危機感を持つべきだろう。

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