一度は香港から撤退

 98年には香港などアジア地域からの撤退を余儀なくされるなど、同社の海外事業は決して平たんな道のりではなかった。

 香港での失敗は合弁企業だったために良品計画が主導権を握れなかったことにあった。「無印良品」ブランドは元々、西友のプライベートブランド(PB)として1980年にスタートしたものだった。良品計画が「無印良品」を展開する製造小売業(SPA)として、西友からスピンアウトし、事業の展開を始めたのは1990年のこと。親会社・西友や現地資本と共に香港で合弁会社を置き、出店した。

 香港に進出したのは英国と同じ1991年。店舗数を11店まで増やしたものの「『無印良品』の世界観を十分に伝えられなかった」と大木氏は振り返る。「わけあって、安い」をキャッチフレーズとする「無印良品」の特徴は、無駄のないシンプルなデザインで長く使える商品を提供することだ。それもそのジャンルが衣料、家具、文具、食料品など多岐にわたる。

失敗から学んだ成功

 同社の商品アイテム数は現在、約7000ある。「当時でもアイテム数は4000以上あったはずで、その良さを知ってもらうには多くの商品を分かりやすく並べて、そこに統一して存在する無印良品のブランドとしての考え方を現地の消費者の方々に知って頂く必要があった」(大木氏)。しかし、店舗面積が狭い店ばかりで、それが難しかった。

2015年12月に中国・上海にオープンした旗艦店「無印良品 上海淮海755」の外観(上)と店内(下)。7000アイテムある商品を見やすく並べることで、「無印良品」の世界観を伝える。旗艦店があることで周囲に展開する店舗の客数も増える効果は大きい

 もう一つの弱点は売価が高かったことだ。合弁相手の意向で価格が高めに設定されたことに加え、日本から商品を送っていたために価格が割高になる側面もあった。そこで「生産先の中国から日本を経ずに香港で直接商品を引き取ることでコストを削減し、売価の見直しを図ったが、撤退を止めることはできなかった」と当時、香港の現地法人の社長だった大木氏は残念そうに話す。結局、合弁相手の決断で「無印良品」の香港撤退は決まってしまう。

 こうした経験を踏まえ、海外進出時には単独か自社主導で展開できる合弁相手と組むようにしている。2001年に香港へ単独で再進出。バランスの良い品ぞろえで、「無印良品」の世界観を伝えることにこだわった。結果は大成功で、現在では香港だけで17店を展開している。