まずは有機ELパネルの調達拠点に

シャープをめぐり革新機構と鴻海が買収合戦を繰り広げた。鴻海案では髙橋興三社長は当面、続投できる見込み(写真:都筑 雅人)。

 一方、世界の液晶市場は過剰設備を抱えた韓国、台湾、中国勢による値段の叩き合いが止まらない。そんなマーケットに約7000億円もの大金を積んで、のこのこ入っていくほど、ホンハイはのんきな会社ではない。

 ディスプレー事業におけるホンハイの狙いは、2月25日のシャープの発表にもある通り、シャープの液晶工場を有機ELパネルの工場に変えることにある。ホンハイの最大の顧客である米アップルは早ければ来年にも、有機ELパネルを使った新型iPhoneを投入する計画とされる。

 アップルが要求する品質と量の有機ELパネルが生産できるのは、現時点で韓国のサムスン電子のみ。なんとか間に合いそうなのが同じく韓国のLGである。日本のシャープとジャパンディスプレイ(JDI)は周回遅れ。サムスン頼みを避けたいアップルがホンハイの背中を押し、シャープにテコ入れさせた、と見るのが妥当であろう。

 その証拠にシャープは25日のニュース・リリースに「新たに調達する4800億円のうち2000億円を有機ELの立ち上げに投じる」と書いている。

 だがこれだけではホンハイがシャープに7000億円を積んだ理由にならない。ゴウ氏は「現在」と「未来」にある二つの野望を実現するためにシャープを買ったのだ。

白物家電こそ「肥沃な市場」

 「現在」の野望は家電である。日本ではAV(音響・映像)の「黒物」をハイテク、生活家電の「白物」をローテクと定義しがちだが、ゴウ氏は白物にこそ未来があると見ている。テレビ、ビデオ、ステレオ、カメラ…。黒物の機能のほとんどはスマートフォンに吸収された。

 一方、どんなにデジタル化が進んでも、洗濯機や冷蔵庫はなくならない。むしろ全てのものがインターネットにつながるIoT(Internet of Things)時代が来れば、世界の人々が家中の白物家電を買い換えることになるかもしれない。

 今年1月、中国の海爾集団(ハイアール)は54億ドルで米ゼネラル・エレクトリック(GE)の家電事業を買収した。この時、GEは複数の企業と交渉しているが、最大の対抗馬が実はホンハイだったのだ。ハイアールは三洋電機の白物家電部門も買収している。新興国市場を主戦場とするホンハイやハイアールにとって、白物家電こそ「肥沃な市場」なのだ。