在庫商売はもうやめる

木村:日本法人では、これを機に輸入車ではほとんど例がない受注生産に切り替える検討をしています。つまり、日本で自分の好きなように仕様を組み合わせ、それを受注してから中国工場で生産する。

 つまり、「在庫商売」をやめるということです。各販売店が限られた在庫を持っていると、「この色なら安くしますよ」となりがちなんですね。こういうのはもうやらない。

ウェブで限定発売する「S90」
ウェブで限定発売する「S90」

 まずS90の限定発売で「ウェブでしか買えない」という流れをつくり、中国生産に切り替わってもウェブで仕様を選んでもらう形にしたいと思っています。

 加えて、500台の販売で顧客の嗜好をつかみたい。先ほど言った通り、販売店が在庫を持っていると、どうしても「うちに黒の在庫があるから黒を薦める」というセールストークになる。これは販売店からしたら当然の考えなんですね。でも、これでは本当に客が欲しかった仕様が何なのか分かりにくい。

 S90はセダンで、我々は(メルセデス・ベンツやBMWなどの)独プレミアムメーカーにチャレンジする立場。ドイツ車ではなくてボルボのクルマに乗りたいと思う層がどんな嗜好を持っているのかを知りたいんです。挑戦者なので、新しいことをしなければならない。

昨年10月にホーカン・サムエルソンCEO(最高経営責任者)にインタビューした時、デジタルと融合した超小型店舗を、東京やマンハッタンなど世界で4カ所に設けると日経ビジネスに明かしました。

木村:その話でCEOに火を付けたのは、我々日本法人なんですよ。だから日本発と言ってもいい。「絶対に必要だ」と進言したんです。

なぜ必要だと。

木村:「あなたの思い通りの一台が作れます」という店舗にしたいんです。楽しさがあるでしょう?全てオーダー制にして、在庫を持たない。デジタルで選んでもらって、実車は近くのディーラーで確認してもらう。店舗の内部空間も、北欧らしい空間にしたいと持っています。

 日本には青山などの都心にブティック型のクルマの店舗がありますが、どの自動車メーカーもうまくいっていない。小さい販売店の機能しか持たないものと、博物館のようなものに二極化しています。我々はどちらにもしたくない。デジタルと店舗の融合をやります。

新店舗の進ちょくは?

木村:青山周辺で立地の選定は終わりました。近々発表します。オープンの前に、青山通りで予告広告を出します。

次ページ トランク配送サービス、日本でも