700万円のクルマを『ポチ』は無理

ボルボ・カー日本法人の木村隆之社長。1987年にトヨタ自動車入社。2003年にユニクロを展開するファーストリテイリングに営業本部長補佐として転職。2008年に日産自動車へ移り、2009年インドネシア日産社長などを経て、2014年にボルボ・カー・ジャパン社長に就任
ボルボ・カー日本法人の木村隆之社長。1987年にトヨタ自動車入社。2003年にユニクロを展開するファーストリテイリングに営業本部長補佐として転職。2008年に日産自動車へ移り、2009年インドネシア日産社長などを経て、2014年にボルボ・カー・ジャパン社長に就任

会見では一言だけ「S90をオンライン限定で発売する」とのアナウンスがありました。その具体的な中身とは?

木村隆之社長(以下、木村):「S90」は日本国内では当面、スウェーデンの本社工場製の500台を限定で販売します。輸入車の場合、台数が限定されていると全国の各販売店が在庫に配置して、その販売店の顧客がそれぞれのクルマを買う。でもこの売り方は公平じゃない。

 全国にあまねく存在する顧客に平等に知ってもらうためには、ウェブは非常に有効な手段です。全ての(オプションやカラーリングなどの)組み合わせを500台分、ウェブでオープンにして、そこから自由に選んでもらおうと。それが出発点です。

決済までウェブでやるのでしょうか。

木村:いや、取引まではやりません。EC(電子商取引)の流れは理解していますが、私はクルマで簡単にECが普及するとは思っていません。クーリングオフの問題もある。ナンバーを付けたクルマを納車してクーリングオフされたら我々も困ってしまう。

 ただ、購入プロセスの一部をデジタル化することは非常に価値がある。顧客は販売店に行かずにウェブ上で予約だけして、実際にクルマを見たり試乗したりして気に入らなければ買わなくて構わない。そのクルマはまたウェブ上で予約できる状態に戻るだけです。

 正直な話をすると、ボルボのような700万円もするクルマをアマゾン・ドット・コムのようなサイトを使ってワンクリックで「ポチっと」買うか。買わないですよ。

 より欲しいクルマを買えるようにデジタルの力を使う。これが本筋でしょう。

500台を売るためだけにウェブサイトを立ち上げると、かえって効率が悪くなる気がします。

木村:もう一つの狙いがあります。実は、500台という制約は生産面から生まれたものです。S90の生産場所は、現在のスウェーデン本社工場から、建設中の中国工場に切り替わります。S90だけは欧州向けも北米向けも全て中国工場で生産することになる。

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