大阪のテーマパーク、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)と東京ディズニーリゾートが強気の値上げを続けている。USJを運営するユー・エス・ジェイは沖縄進出計画を撤回を検討しており、新規施設の開業でリスクを犯すよりも、既存施設を値上げしながら施設を刷新して収益力を高めるのが得策と判断しているようだ。しかしテーマパーク産業は、敷地などの制約もあり、入場者数を伸ばし続けるにも限界がある。長期的な成長戦略をどう描くかは、両社にとって引き続き課題となる。

 日本を代表する2大テーマパークが「沖縄」を巡って揺れている。ユー・エス・ジェイは沖縄県本部町の海洋博公園に開業予定だった新テーマパークの建設計画を撤回する検討を始めた。昨年ユー・エス・ジェイは、米国で「ユニバーサル・スタジオ・ハリウッド」などを運営している米ケーブルテレビ大手のコムキャスト傘下に入り、合わせて経営陣も刷新された。沖縄では採算を取るのが難しいと判断している模様だ。「入園者数を年600万人と見積もるなど、沖縄県が人口わずか140万人ということを考えると、強気の計画だった。海洋博公園にある『沖縄美ら海水族館』の年間入場者数は320万人。遠方からの観光客に依存することになり、安定した集客が見込めないと考えたのでは」と、関係者は話す。

 一方で、沖縄県宜野湾市にある米軍の普天間飛行場が移設された跡に、同市がディズニーリゾート関連施設を誘致する計画が持ち上がっている。運営会社のオリエンタルランドは、自治体からの要請に対し「今後慎重に検討する予定であり、現段階で対応・方針は決定していない」としている。計画の実現可能性はまだ分からない。

「付加価値を高めて入場料上げる」戦略

 USJは2016年1月、2015年度の入場者数が過去最高の1400万人近くに達するとの見通しを明らかにした。新たにユー・エス・ジェイの最高経営責任者(CEO)となったジャン・ルイ・ボニエ氏は、就任会見でUSJの集客について「あと300~400万人は増やせる」と話した。USJの成長余地は大きく、新テーマパーク開業でリスクを取るよりも、既存施設の価値向上に経営資源を集中した方が会社の長期的な成長につながると考えたのだろう。

 2013年に東京ディズニーランドが開業30周年を迎えたオリエンタルランドも、東京ディズニーランド、東京ディズニーシーという2つの既存施設のブラッシュアップを通じて成長を続けようとしている。

 過去には2008年、カナダのサーカス団「シルク・ドゥ・ソレイユ」と提携し、テーマパーク事業以外で集客を図ろうとしたこともあった。だが東日本大震災の影響もあって採算がとれず、10年以上公演する契約を約3年で打ち切った「苦い過去」がある。

 装置産業であるテーマパークで集客力を高めていくためには、常に新しい魅力を創出していく必要がある。USJそしてオリエンタルランドはここ数年、既存施設の付加価値を高めると同時に、入場料を値上げすることで成長を維持しようとしている。

テーマパークは「7000円台時代」に
●東京ディズニーリゾートとUSJの1日入場券の推移
テーマパークは「7000円台時代」に<br/>●東京ディズニーリゾートとUSJの1日入場券の推移
注: 東京ディズニーリゾートは「1デーパスポート」の価格、USJは「スタオ・パス」の価格。税込み
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 5年ほど前はそろって6200円だった両テーマパークの1日入場券は、段階的に値上がりし、USJが2016年2月から、東京ディズニーリゾートは4月から7400円となった。USJは6年連続、東京ディズニーリゾートは3年連続の値上げとなる。

 値上げのたびに、新アトラクションやショーを追加してきたことで、集客力は高い水準を維持し続けてきている。オリエンタルランドは、2016年3月期の入園者数に3040万人を見込む。2015年3月期を下回るものの、過去3番目の高水準を見積もる。2016年3月期の上半期は入場者数に減速感が見られたが、下期のハロウィンやクリスマスのイベントの集客が功を奏し、勢いを盛り返しつつある。

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