当面、ニチガスと東京EPはそれぞれ別個に顧客開拓していく計画だが、和田社長は「東電とタイアップし、ガスだけでなく電力でも割引ができるようなプランを作ろうと準備している」と話す。さらに、今後は提携関係を強化し、両社で合弁会社を設立、共同で異業種が参入しやすい都市ガス小売り事業のプラットフォーム(基盤)を開発する計画も進める。

 都市ガス小売り事業に異業種が参入するハードルは電力事業よりも高い。LNGを抱える企業は電力、ガス会社を除けば限られており、ガス機器の保安義務も異業種が手がけるのは難しい。そこで原料を多く抱える東電EPと、保安ノウハウのあるニチガスが原料調達と業務を担い、ガス小売り参入を検討する企業に開放していく計画だ。関係者によれば、このプラットフォームの利用を検討する企業が既に水面下で東電EPやニチガスと協議を進めているようだ。

盛り上がるか関東圏のガス競争

 ニチガスはLPガス業界で強気な営業をする「暴れん坊」として知られる。ITを使った事業の効率化に力を入れ、近年ではネットベンチャーと資本業務提携したり、仮想通貨ビットコインを決済に取り入れたりと、保守的な姿勢が目立つ業界では異色の会社だ。今回の都市ガス小売り参入にしても、「AI(人工知能)やフィンテックなどを取り入れて今までにない都市ガス事業を展開し、生産性を上げていくことが目的」(和田社長)と強調する。

 この「暴れん坊」がまずは自ら都市ガス市場で攻勢をかけて、消費者の需要を喚起する。これを第一段階とすると、東電EPという電力とLNG界の「巨艦」と共同して市場開拓に乗り出すのが第二段階と言えるだろう。さらに、両社で異業種参入の枠組みを作り東京ガスを包囲する大船団を作りあげる。ニチガス和田社長が思い描く野望は壮大だ。

 株式市場や業界関係者からは「東電が本気でニチガスと組む気があるとは思えない」(業界アナリスト)といった指摘や、「ニチガスはブランドの認知度が低いから、需要喚起の主役にはなり得ない」(業界関係者)といった冷ややかな見方も出ている。ただ東電は福島第一原子力発電所の事故費用を賄うため国から収益を上げることを強く要請されており、小売り分野で営業力のあるニチガスを利用しない手はないだろう。またガス自由化を成功させたい国としても、前のめりで市場攻略に挑むニチガスを後押しこそすれ、足を引っ張ることはないとみられる。

 ニチガス・東電連合を迎え撃つ東京ガスは1月31日、独自のポイント制度を拡充してガスと電力を割り引く新プランを発表した。ポイントによりサービス強化を図ることで過度な料金競争は避けたい考えだが、ニチガスや東電EPの出方次第では、新たな対応を迫られるかもしれない。

 既に料金競争が激化している関西圏などと比べ、関東圏は盛り上がりに欠けていると指摘されてきた。ニチガスはどこまで国内最大消費地である関東圏の都市ガス市場で暴れることができるか。その巧拙はガス自由化の成否にも直結しそうだ。