2017年9月、米玩具販売大手トイザラスが、連邦破産法11条(日本の民事再生法に当たる)の適用を申請した。同社は営業を続けているが、米国内店舗の2割に当たる約180店舗を閉鎖し、経営再建の地盤を固める計画だ。日本には1991年に初出店した。そのころ米国は日本市場の閉鎖性の象徴として、大規模小売店舗法の改正を求めており、トイザラスは「市場開放」に向けた象徴的な事例とされた。
トイザラスの特徴はメーカーとの直接取引などを駆使した低価格販売。日本で事業を広げることで、既存の玩具店は大きな打撃を受けた。現在、日本トイザらスは、玩具専門店「トイザらス」とベビー用品専門店「ベビーザらス」合わせて、約160店舗を展開している。だが、ここ数年の店舗数は横ばい。2017年1月期の売上高は約1405億円、営業利益は約33億円だった。米国同様、アマゾン・ドット・コムなどのネット勢の影響が強まる中、新たな戦略が求められている。2017年9月に日本トイザらス社長に就いたディーター・ハーベル氏に聞いた。
日本トイザらスのディーター・ハーベル社長。オーストリア出身。ドイツのコカ・コーラ勤務などを経て、ギャップジャパンCFO(最高財務責任者)やラコステ ジャパン社長を歴任。2017年9月より現職。(写真:竹井俊晴)
昨年、「本家」である米トイザラスが破産法を申請し、不採算の店舗が順次閉鎖される計画です。日本トイザらスは、トイザラスのアジア事業を担う法人の100%子会社であり、米社から見れば、孫会社に当たります。今回の申請の影響はあるのでしょうか。
米トイザラスの申請を受けて、日本のお客様から心配の声が上がっています。しかし、今回の申請が適用されるのは米国です。日本は対象外ですから、日本国内の店舗はこれまで通り営業します。
店舗とオンラインの連携を重視
とはいえ、日本でも米国同様、アマゾン・ドット・コムなどのインターネット通販の存在は一段と大きくなっています。米国同様に、トイザらスの経営に大きな影響を及ぼす可能性があるのではないですか。
私は、米トイザラスの破たんの原因はネット通販の台頭ではないと思っています。それよりも、かねて抱えていた、大きな負債が原因です。2005年に米トイザラスは投資ファンドによって買収され上場を廃止しています。当初はリストラを経て再上場することを目指していたと思いますが、2008年にリーマンショックが起きてしまいました。結果、多額の負債の返済に行き詰ったのでしょう。
ネット勢の台頭で経営環境が激変しているのは間違いないはずです。日本トイザらスでもEC(ネット通販)への対応は必要になってくると思いますが、どうお考えですか。
当社は実店舗を大切にしているとはいえ、ECにも注力しています。EC化を進める目的は、お客様に多様な購買チャネルを提供することで、よりよい購買を体験してもらうためです。「店舗からオンラインへ」「オンラインから店舗へ」といったように両者を滑らかにつなぐことで、お客様の利便性を高めています。
日本トイザらスは2000年にEC事業を始めました。2012年には、オンラインで注文した商品を店舗で受け取れるサービスを開始し、今ではコンビニでも受け取れます。店内の端末からオンライン注文できる「ストア・オーダー・システム」も全国の店舗に設置しています。
今では公式アプリ内にバーコードリーダーを搭載し、店舗の商品のバーコードを読み取るだけで、そのままオンラインストアの商品ページが自動的に開く仕組みになっています。公式アプリには指紋認証機能も搭載しました。決済前の確認時などに、指紋認証を使用できます。パスワード入力の手間を省くことで、購入に際しての利便性を高めました。EC戦略は、アメリカなど他国も参考にしていますが、基本的には日本独自で進めています。
小型店の展開に新たなチャンス
ただ、EC以外にも懸念材料はあります。日本では少子化が進んでおり、玩具市場は縮小していくでしょう。その点についてはどうお考えですか。
個人的にはあまり気にしていません。私たちの仕事はお客様により良い購買体験を提供することだけです。例えば、横浜市の港北ニュータウン店には子どもたちがおもちゃで遊べるスペースが多くあります。今後もこのような店舗を展開していくつもりです。
ディーター社長は2017年9月に就任しました。今後ご自身が進めていく戦略をお聞かせください。
小型店の展開を進めていきたいと思います。2016年に北海道札幌市と茨城県ひたちなか市に通常の売り場面積(2200平方メートル)の3割程度の小型店を出しました。翌2017年には宮城県仙台市と大阪府堺市にも小型店舗を出しています。
仙台の店舗は駅直結のビルの中にあります。駅や人通りの多いところに出すことで、より多くの人に気軽に寄っていただきたいと思います。駅直結のビルはテナント料も高いですが、小型であれば出店できます。
小型店の展開は日本独自の取り組みなのですか。
小型店はトイザラスのアジアの店舗を参考にしました。小型店の出店に関してはアジアは日本よりも先行しています。アメリカでは大型店が中心です。
今のところ出店した小型店は順調です。仙台市の店舗がオープンしたときは、米トイザラスの破産申請の後にもかかわらず、長い列ができていました。実験の意味も込めて、札幌や仙台といった地方都市から始めましたが、狙いは東京都心での展開です。2018年はその準備を進めたいと思います。
Powered by リゾーム?