廃案か大幅修正もあり得る、成立でも今年秋以降か

 しかし、この議会の共和党内部での大掛かりな調整が必要になれば、「国境調整」を含めた抜本的な税制改革の成立は、今年の秋以降、年末など相当先になるだろう。それは、今のライアン下院議長など下院指導部のこれまでの根回しのなさ、当面の議会はオバマケアの廃止・置換を優先し、税制改革は夏以降というライアン氏の審議日程の組み立て方をみても、明らかである。しかも、トランプ政権も、ようやく担当閣僚のムニューチン財務長官が就任したばかりで関係する政府高官が揃わず、トランプ政権独自の「国境調整」の具体的な提案は当面、望むべくもない。トランプ大統領も、「国境調整」を取り上げてツイートすることは多々あるだろうが、リーダーシップを発揮する機会はおそらくないだろう。現時点では、月内に示されるトランプ政権の税制改革案でも、「国境調整」は下院共和党案の受け入れが示される程度とみる。

 その後、来月から夏にかけても、「国境調整」は共和党内でも意見が分かれ、産業界も輸出企業と輸入企業による支持と反対に二分され、最終的に断念に追い込まれるのか、輸入の例外品目を認めるなど譲歩があるのか、非常に不透明な状態が続くだろう。それでも、トランプ政権も議会共和党も、「国境調整」を早期に断念することはないだろう。国境調整で見込む税収が10年間で1兆2000億ドルと非常に大きく、これがなければ財政赤字の拡大を抑えて法人税の大幅な税率引き下げを実施することは困難だからだ。「国境調整」が実施されれば、そのスケールの縮小があっても、米国への輸出が多い日本企業への影響は非常に大きいと思われるだけに、今後のトランプ政権、上下両院からの声と審議状況を注意深く追い続ける必要があろう。

 日経ビジネスはトランプ政権の動きを日々追いながら、関連記事を特集サイト「トランプ ウオッチ(Trump Watch)」に集約していきます。トランプ大統領の注目発言や政策などに、各分野の専門家がタイムリーにコメントするほか、日経ビジネスの関連記事を紹介します。米国、日本、そして世界の歴史的転換点を、あらゆる角度から記録していきます。