裏で糸を引く投資会社の存在

 3Gキャピタル創業者の名は、ジョルジ・パウロ・レマン。ブラジルでは、伝説の投資家として知られている。

 レマン氏は、米ハーバードを3年で卒業、元ブラジルのプロテニスプレーヤーといった異色の経歴を持つ起業家だ。1939年生まれの77歳だが、今も現役の投資家として世界を飛び回る。ブラジルの長者番付の常連で、現在はスイスのチューリッヒ郊外にテニスコートとプールを要した自宅を構える。

 レマン氏の名を一躍有名にしたのが、他ならぬABインベブだ。同社の前身は、ブラマと呼ぶブラジルのビール会社だった。レマン氏は1997年、自身が創業した投資会社バンコ・ギャランティアを通じ、ブラジルのビール会社、ブラマを買収した。その後約20年で、世界シェア3割を持つ世界企業に育て上げた。

 徹底したコスト削減と実力主義、そして資本効率を最大限に高めるM&A。レマン氏は、これらを忠実に冷徹なほどに貫き、会社を鍛え上げていく。

 例えばコスト削減では、「ゼロベースバジェット」と呼ぶ予算の仕組みがある。これは毎年の予算を、前期比で汲み上げるのではなく、ゼロベースで積み上げていく。特に大事なのはコストで、交通費だけでなく、携帯電話の通信料といった細目まですべてを見直し、前年よりも必ずコストを抑えていくものだ。レマン氏はこの仕組みはブラマ時代から導入し、ABインベブで今も実践されている。

 「コストはツメのようなもの、常にカットし続けていかなくてはダメだ」というのが、レマン氏の口癖。社員はムダなコストをかけないことを徹底される。平社員から社長まで含めて、社員の移動は基本的にエコノミークラス。CEO(最高経営責任者)であっても出張先のホテルはビジネスホテルに泊まる。役員に個室はなく、大部屋で仕事をする。

 一方で、達成した成果には多額の金銭報酬で報いる。ABインベブの場合も、掲げた数値目標に対する達成度が、その年のボーナスに直結する。その金額は、最低でも給与の2倍、多い場合は10倍に達する。これが、従業員がたとえエコノミークラスでも耐えられるという原動力になっている。

 社員の実力主義は徹底しており、結果が未達に終われば、上司から警告を受け、5W1Hに基づき、綿密な改善計画の提出が求められる。この警告が3回発せられると、ストライクアウト。実質的なクビが言い渡される。パフォーマンスの低い下位10%は常に入れ替えるのが、同社の暗黙のルールだ。

 コスト削減で浮いたキャッシュは、社内に眠らせず、すぐにM&Aに回し、資本効率も徹底的に上げる。ABインベブのROE(自己資本利益率)は、2005年12月期の7.6%から2015年12月期には18.1%に上昇した。