今回のリポートは欧州の政策関係者にも驚きを持って受け止められた。チャタムハウスは、米ブルッキングス研究所などと並ぶ、世界有数のシンクタンクとして知られている。発表内容に対する信頼も高いからだ。

 欧州メディアもこのリポートに反応し、「多くの欧州市民が、実はトランプ大統領の入国規制に賛成している」という趣旨の報道をした(ただし、今回の調査が実施されたのは、トランプ大統領が入国制限を発表する前だった)。

高齢者、低学歴、地方在住が入国制限に賛成

 リポートでは、回答者の属性も分析している。そこから浮かび上がる、移民に反対する人々の人物像は、「高齢者」「低学歴者」「地方在住」に大別できる(グラフはこちら)。

 イスラム移民の入国停止に賛成する人の割合は、年齢別に見ると、18~29歳の若年層では44%なのに対して、60歳以上では63%に達した。学歴別では、大卒以上では48%である一方、高校卒業以下では59%に上る。地域別では、都市部では52%なのに対して、地方では58%だった。「いわゆる、経済成長に取り残されたと感じている層に重なる」(グッドウィン教授)。

 もちろん、今回の調査結果が欧州10カ国のイスラム移民に対する姿勢を正しく反映していると断言することはできない。移民に対する考えや結果は、誰にどのように聞くかで結果が変わる。それでも、移民に対する考えが欧州でも大きく割れていることが、調査結果を通して明らかになったのは興味深い。

取材現場の肌感覚に近い

 というのも、この調査結果は、欧州の現場で移民問題を取材している記者の感覚に近いからだ。英国のEU離脱を巡る昨年の国民投票では、世代、学歴、住んでいる場所によって、移民に対する見解が分かれた。特に都市部と郊外の居住者では離脱を巡る考えは異なり、郊外に住む人の方が、移民に対して批判的だった。

 記者は今、3月15日に予定されているオランダ下院選挙の現場を取材しているが、ここでは、特に世代間の意見の相違が大きい。今回の選挙は、「反イスラム」「反EU」を掲げる極右政党の自由党が躍進すると見られている。同党を強く支持しているのは高齢者だ。

 4月に大統領選を控えるフランスでも、反移民を掲げる極右政党、国民戦線への支持は、都市部よりも農村部で高いことが世論調査で明らかになっている。