ヨーロッパのイージス・アショア施設は米海軍が運用している。対して日本では、陸上自衛隊が運用するといわれている。ハードウェアとソフトウェアが共通だから、陸上自衛隊のイージス・アショア要員は、海上自衛隊のイージス艦乗組員と机を並べて、同じ訓練課程を受講することができる。つまり、これまでになかった種類の武器体系を導入する場合と比較すると、導入・運用に際しての初度費(防衛装備品の生産に伴い発生する諸費用のうち、初回の調達に係る設計費、専用治工具費、試験費、技術提携費などの費用)を抑えられる利点がある。

 また、導入後のメンテナンスや能力向上改修についても、既存のイージス艦と共通にできる。そしてイージス戦闘システム自体が日米の共通装備だから、米国で開発した新しい機能、あるいは不具合の修正は、日本のイージス戦闘システムに対しても同様に適用できる。

 日米が足並みを揃えて同等の能力を備えたシステムを運用することは、相互運用性の向上につながる。それだけでなく、古いシステムを使い続けることに起因するリスクを回避する役にも立つ。もちろん、能力向上改修を行うには、相応の経費が必要になることを忘れてはならないが。

 なお、米海軍ではイージス艦が搭載するレーダーを、新型のAN/SPY-6(V)に切り替える計画が進んでいる。しかしイージス・アショアについては、まだ具体的な動きは出ていない。ロッキード マーティンは、米ミサイル防衛局(MDA)から契約を得てLRDR(Long Range Discrimination Radar)という新型レーダーを開発しているが、それも含めて「さまざまな選択肢を用意する」(ヒックス氏)との話にとどまっている。

LRDRは、ロッキード マーティンが開発中の新型レーダー。弾道飛行の頂点とその前後にあたる、ミッドコース段階の交戦に際して弾道ミサイルの探知・追尾を担当する(写真提供:米ロッキード マーティン)

 実のところ、現行のAN/SPY-1D(V)レーダーでも充分な能力はあるが、さらなる能力向上や整備性・信頼性の改善を図るかどうか、という問題になるのではないか。

イージス艦の負担軽減

 現在、海上自衛隊には6隻のイージス艦がある。このうちイージスBMDの機能を備えているのは4隻の「こんごう」型だけだ。前述したように、2隻の「あたご」型はBMD対応改修を進めている段階で、まだ1隻目の「あたご」の改修が途中まで進んだ状態である。

2017年2月にハワイで実施した試射「SFTM-01」で、ミサイル駆逐艦「ジョン・ポール・ジョーンズ」から発射されたSM-3ブロックIIA。太平洋ミサイル試験場からから中射程弾道ミサイル模擬標的を発射して、それをSM-3ブロックIIAで迎え撃つという内容だった(写真提供:米国防総省ミサイル防衛局)

 ということは、北朝鮮の弾道ミサイル発射事案が発生すれば、4隻の「こんごう」型が一手に対処任務を引き受けなければならない。数少ない艦や乗組員に、多大な負担を強いているのが実情だ。

 しかし、SM-3ブロックIIAを装備するイージス・アショアを日本国内の2カ所に配備すれば、BMDの土台をそちらに委ねることができる。それによってイージス艦の負担軽減を図ることができれば、「特定の地域にイージス艦を増援してBMDの護りの層を厚くする」こともできるし、「艦と乗組員の負担を軽減して、整備・訓練・休養に充てる余裕を増やす」こともできる。また、「BMDではなく、航空機や対艦ミサイルを迎え撃つ防空艦としての任務の割合を増やす」こともできる。

 人手不足の割には任務が多く、過重負担に陥っている海上自衛隊の艦艇部隊にとって、イージス・アショアは、負担軽減をもたらす福音になる可能性を秘めているといえる。