30億円の売り上げ減はデジタル戦略でカバー
深夜営業を休止したり、メニュー改定の頻度を減らしたりすれば、当然、業績にマイナスの影響を及ぼす。特にメニュー改定の頻度を減らせば、常連客にとって新鮮味が乏しくなる。計画している通り、深夜営業している990店のうち65%で深夜営業を止めれば「年間で売り上げは30億円、利益で8億円のマイナスになる」と谷社長は試算する。
それでもすかいらーくは、2017年12月期に既存店で売り上げを1.5%増やし、マイナスの影響を払拭しようとしている。どのようにカバーするのか。
「プロモーションのやり方を、アナログからデジタルへ変えていく」と谷社長は語る。同社はこれまでカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のTカード会員のデータを、クーポンの発行やメニュー開発などに生かしてきた。今後も過去に食べた商品から、それぞれの顧客に合ったクーポンをデジタルで発行していく。
また、クーポンの額も、個人によって変える。谷社長によれば、客単価の“下層”を形成している顧客は、来店頻度が低くなる傾向があるという。こうした人たちには1回300円引きのクーポンを発行する一方、来店頻度の高い人には50円引きとするような施策を打つ。また、お正月やお盆などのイベントのある時期には全業態で10%引きといったプロモーションを展開していく。こうした施策は既に検証済みで、今年から本格的に注力していく方針だ。
2017年からの出店数は3倍強に増やす
このほか、テイクアウトやデリバリーも強化する。デリバリーは現在、ガストはガストの商品しか届けられないが、別の業態の商品も一緒に注文できるようにする実験を進めており、消費者の多様なニーズを満たしていく考えだ。
すかいらーくは、2017年から3年間で450店の新規出店を計画している。その前の3年間は144店だったので、実に3倍強となる。新規出店する地域は、最近強化していた人口の集中した都市部ではなく、従来の強みであるロードサイドだ。従業員を十分に確保することが、目標達成には不可欠と言えるだろう。メニューの改定頻度を減らしたり、深夜営業を止めたりすることで目先の売り上げは減るかもしれないが、それでも将来の成長に向けた手を打ったわけだ。
外食業界では日本マクドナルドが業績を改善した。今期はさらに新規採用を強化したり、育成のツールを改定したりして、「人材に定評のあるマクドナルド」の巻き返しを図ろうとしている。ファミレスとファストフード、両方の雄が人材確保にさらに動くことで、人材争奪戦はますます厳しくなりそうだ。
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