経営面で行き詰まった創業1950年の老舗アパレル、イトキンは2月10日、投資会社インテグラルの傘下で経営再建を目指すと発表した。かつて一世を風靡した「ミッシェルクラン」「ヒロココシノ」などのブランドを有するも、長引く景気低迷やファストファッションの台頭で、ここ数年は苦戦を強いられていた。
 支援に名乗りを上げたインテグラルは最近では航空会社「スカイマーク」のスポンサーとして注目を集めた会社。アパレルメーカー「ヨウジヤマモト」を支援した実績も持つ。 日経ビジネスオンラインは、インテグラルの経営再建発表後、再建を支援するインテグラルの山本礼二郎代表取締役パートナー、辺見芳弘パートナー、そして今後社長に就任し、再建を主導するイトキンの前田和久取締役副社長に単独インタビューした。

(聞き手:武田安恵、日野なおみ/撮影:的野弘路)

左からインテグラルの山本礼二郎代表取締役パートナー、イトキンの前田和久取締役副社長、インテグラルの辺見芳弘パートナー。前田氏は次期イトキン社長に、辺見氏は取締役会長に就任する予定だ。

双方に伺いします。今回出資に至った、出資を仰ごうと決めた経緯は?

山本:昨年の夏くらいから「イトキンから資金援助のニーズがある」という話を聞き、接触を試みましたがその時はまだ会うまでには至りませんでした。実際に会ったのは、ある商社の方の仲介で10月に入ってからです。イトキン側も既に「覚悟」を決めていたのではないかと思われます。インテグラルの他にもいくつかスポンサーを検討しているファンドがあると聞いていましたが、何回かミーティングを重ね、今年1月に入って正式にインテグラルで行くとの返答をいただきました。

前田:インテグラルは「ヨウジヤマモト」の再生を支援した実績のあるファンドです。ヒアリングを受けた際も、ファッションビジネス、アパレル業界のことを非常に良く理解していて、とても話が早かった。こことならいけると思いました。

 2000年はじめ、1500億円近くあった売上高は2008年のリーマンショック、2014年の消費増税をきっかけに大きく落ちて、900億円くらいまでになっていました。あと1年遅かったら債務超過で、会社を清算しなければならないところまで来ていました。

 昨年8月にまとまった額の社債の償還を迎えた際、資金繰りに関してはクリアできたのですが、10月以降の想像以上の暖冬で、会社全体で売り上げが大きく落ちました。このままの厳しい経営環境だと仕入れの支払いなどを乗り切れないと判断し、スポンサー探しを始めました。決めてからのスピードは早かったと思います。

インテグラル側は、イトキンのどこに再生のポテンシャルを感じたのですか。

辺見:イトキンのビジネスの立ち位置は、以前、再生を支援した菓子メーカーの東ハトに非常に似ています。東ハトにはグリコの「ポッキー」のようなメガブランドはないけど、ニッチな市場に強い商品を持っています。

 同様に、イトキンにはワールドやオンワードといった大手アパレルのように、売上高何百億円クラスの大きなブランドはありませんが、個性豊かな売上高30~50億円規模のブランドがたくさんある。多様化する消費者の好みに対応できる、ニッチな市場攻略ができると考えたのです。大きくなり過ぎたブランドを変えていくよりも、再生の可能性は高いと感じました。

 しかし、販路の約7割を百貨店が占めるなど、百貨店との付き合いの強い会社でもあります。つながりが強いだけに、新しいことに舵を切れない「弱さ」があったと思います。百貨店の売り場は、フロアごとに年齢層がセグメント化されているケースが多い。昔はそれでもよかったかもしれませんが、時代は変わりました。その商品を本当に欲しい消費者に届けるようにするには、限界があるでしょう。

 服を売るチャネルは、百貨店のみならずショッピングセンター(SC)や、eコマース(EC)など多様化しています。キラリと光るブランドがたくさんありますので、「商品の売り方、打ち出し方」さえ工夫すれば、ブランドは育つし、面白い会社になるのではと感じました。

山本:しっかりした生産体制を持っている点も、投資したいと思ったポイントです。円安が進んで海外での生産コストが上がり、アパレル業界全体で生産の国内回帰が進んでいます。でもそう簡単に生産を委託できるコネクションは作れない。イトキンは古くから信頼のある協力工場をたくさん持っています。商品全体の8割を国内で作っているブランドもありますから。ものづくりのノウハウ、技術も非常に高いと見ています。