「個人のコミュニケーションがチャットやトークに収斂していったように、企業や業務におけるメールも自然淘汰されていくだろう。少なくとも当社(LINE)の社内でメールが消えるのは、時間の問題」

 そう語るのはLINEの出澤剛社長。LINEは今、企業内や顧客とのコミュニケーションに欠かせないツールとなっている「電子メール」を、「ビジネス版LINE」によって企業から退場させようと目論んでいる。

「LINE WORKS」の画面。見た目や使い勝手は一般向けの「LINE」そのもの

 LINEは2月上旬から、同じ韓国ネイバーを親会社とする兄弟会社、ワークスモバイルジャパン(東京・渋谷)のサービスを改良する形で、新たに「LINE WORKS」の提供を開始している。

 会社で業務で使える、もう一つのLINE。一般向けLINEと同様、スマートフォン上のアプリでメッセージやスタンプのやり取りができるほか、音声通話やビデオ通話も利用できる。社内アドレス帳やスケジュール管理、ファイル共有、会議室予約などの機能も統合されており、新手のグループウェア、とも言える。

 最大の特徴は、LINE WORKSのアプリから、国内の月間利用者数が約6600万人もいるLINEのアカウントともつながることができること。例えば自動車ディーラーの営業マン、保険の外交員などが、社内に加え、顧客とのやり取りにも活用できる。

 しかし、発表内容だけでは今ひとつインパクトが伝わって来ない。それこそビジネス向けチャットツールは巷にあふれている。

企業で幅を利かせる電子メール

 古くはエンタープライズ向けSNS(交流サイト)として登場し、米マイクロソフトが買収した「Yammer(ヤマー、2008年9月~)」があり、中小企業を中心に世界約10万社が利用する「ChatWork(チャットワーク、2011年3月~)」や、エンジニアやクリエイター職に人気がある「Slack(スラック、2013年8月~)」も有名だ。

 そうした先達が日本の企業文化に馴染んだ、とは言えない状況にある。また、先達のツールは無料プランでも十分に使えるが、LINE WORKSは有料プラン(従業員1ユーザー当たり300円から)のみ。無料でも普及しないビジネスチャットを、有料のみで展開というのはやや強引に映る。

 確かにLINE WORKSは、LINEアカウントとの接続や、メッセージを相手が読んだかどうかを投稿者が確認できる「既読機能」など、先達にない特徴を備えるが、それだけで企業が飛びつくとも考えられない。むしろ消費者は「プライベートのアカウントで営業マンとつながりたくない」と思うかもしれないし、従業員も「上司にいちいち既読をチェックされるのは御免だ」と嫌がるかもしれない。

 それでも、LINEが新領域に参入したのはなぜなのか。勝算はあるのか。LINEの出澤社長と、ワークスモバイルジャパンの松橋博人社長に取材をすると、「働き方改革」への思い、それを後押しする緻密な戦略が見えてきた。