色を塗り分けミス防止

 是正策の内容は、日本から経験豊富な人員をインドネシアに送り込み、生産や品質検査などを厳格な管理下に置くことが柱だ。出荷検査の際には、溶接個所に適切な材料を使っているかを見抜くために、特別な成分分析も実施する。

 また、溶接材を取り違えないよう、管理室では扱う5種類の材料ごとに、受け渡し窓口や管理区分などの色を変えた。炭素鋼は白色、ステンレス鋼は黒色、1%クロム鋼は緑色といった具合だ。溶接する場所でも、担当する溶接材ごとに技能者に同様の色のついた腕章を着けさせたり、溶接する部品にも相応する色のついたシールを貼ったりするようにした。色の貼り付けさえ間違えなければ、溶接材の知識が十分でない溶接工でもミスをしにくくしている。

受け渡す溶接材料ごとに窓口の色を変えてミスを防ぐ

「やれる」が「やらねば」で対応が後手

 同様に、三菱重工業で発生した豪華客船の建造もまさかのオウンゴールと言えるだろう。受注額1000億円程度とみられるプロジェクトにおいて、設計や部材発注の見直しなどが相次ぎ、これまでに約1800億円強の特別損失を計上している。

 2月上旬に開いた決算説明会で三菱重工の宮永俊一社長は「高付加価値船志向にとらわれ、十分な実力の見極めが不足していた」と振り返った。直近の経験が約10年前にさかのぼるとはいえ、三菱重工はこれまでにも客船を建造してきた実績がある。そのため、今回の客船も造船部門が最初に抱いた「やれる」という見込みが、想定外の事態の中で「やらねば」に転じ、顧客の要求水準を満たしていくうえでの対応が後手に回ったと総括した。

 三菱重工が米国系クルーズ会社から受注したのは、複数展開していくシリーズ船の1番船と2番船。特に1番船はプロトタイプとなるため、仕上がりを重視する顧客との綿密なコミュニケーションも求められる。

 当初は基本設計が1年程度で済むと思っていたが、実際は3年かかり、調達や内装など作業全体に混乱と遅れが生じた。客室全室に無線LAN「Wi-Fi」を標準装備するなど、発注者が要求する最新の技術水準への理解が不足していたことなども響いた。今後はリスク管理体制を強化し、担当事業部門がやせ我慢して問題を抱え込まないようにする。

 新興国経済や資源価格、金融情勢など外部環境の激変は個別の企業にはコントロールできず、経営効率化などの対処療法で嵐が過ぎ去るのを待つしかないだろう。

 結果論かもしれないが、オウンゴールは防ごうと思えば防げる。巨額の損失をもたらす大きなオウンゴールはなおさら防ぎたい、経営者であれば誰もがそう思うだろう。特に経営環境が不透明感を増し、収益管理に余裕がなくなってきた現在ではなおさら。多くの企業にとって、IHIや三菱重工の事例は他人事ではないはずだ。