ちなみにトヨタはトランプ氏の攻勢も意識し、今年1月に今後5年間に米国で100億ドルを投資する方針を表明している。背景に政府関係者の助言があったとの証言も漏れ伝わってくる。

 元々の趣旨がどうであれ、安倍首相と豊田氏の会談で、官民が連携して日米間の経済・通商問題に取り組んでいかざるをえないとの危機感が政府・経済界に広がったと言える。

懸念はトランプ氏の会見での発言?

 首脳会談では経済連携の進め方を巡っても意見が交わされる可能性がある。就任早々、TPP(環太平洋経済連携協定)の離脱やNAFTA(北米自由貿易協定)の再交渉を打ち出したトランプ氏は2国間の通商交渉を重視する方針を鮮明にしている。

 政府はこうしたトランプ氏の基本姿勢を1月中旬には把握していた。関係者によると、安倍首相の側近と面会したトランプ氏の娘婿で大統領上級顧問に就いたジャレッド・クシュナー氏はトランプ政権が迅速な実行力をアピールするため米国への投資や雇用増への協力を要請。日米2国間交渉への意欲を強く示唆したという。

 政府関係者は「これ以外に様々なルートを通じて日米交渉への働きかけが強まっている」と漏らす。

 国会答弁で日米2国間のFTA(自由貿易協定)交渉について「全くできないということはない」と答弁した安倍首相だが、多国間で米との折衝に臨むことができたTPP交渉とは異なり、2国間交渉では経済力で勝る米側からの圧力が高まることが予想される。

 政府・自民党内では、自動車など工業品分野で日本が米から一層の自由化を獲得する余地が乏しい一方、農産品分野でより厳しい要求を突きつけられかねないとの警戒感が高まっている。日本の為替政策への対応も大きな懸念材料だ。

 このため、政府は官邸と経済産業省幹部が中心となり、米国の雇用創出やインフラ整備などへの包括的な協力策を提案する準備を進めてきた。

 実利を重視するトランプ氏へ協力姿勢を示し、「大きな枠組みで議論する」(安倍首相)ことで、自動車など2国間協議への要求にできるだけ焦点が当たらないようにしたいとの思惑が透ける。

 政府関係者の間では、首脳会談後の記者会見で、トランプ氏が為替など微妙な問題を巡って不用意な発言をしかねないと懸念する向きもある。安倍首相もこの点を意識しており、トランプ氏に慎重な対応を促す見通しだ。

 予測不能のイメージが強まっているトランプ氏だが、安倍首相に対しては「強いリーダー」として敬意を示しているのも事実だ。

 日米双方の利益につながる関係構築や世界に広がる不透明感払拭への一歩を示すことができるのか。日米首脳の一挙手一投足に国内外の視線が注がれる時が迫っている。

まずは会員登録(無料)

有料会員限定記事を月3本まで閲覧できるなど、
有料会員の一部サービスを利用できます。

※こちらのページで日経ビジネス電子版の「有料会員」と「登録会員(無料)」の違いも紹介しています。

※有料登録手続きをしない限り、無料で一部サービスを利用し続けられます。