政府内では、マクロ経済運営や成長戦略、TPP(環太平洋経済連携協定)など主要政策を一手に担ってきた甘利氏が抜けた影響はこれから表面化してくるとの懸念が広がっている。

「甘利抜き」の影響はこれから

 関係者が最も心配しているのが、TPPだ。参加12カ国は今月4日に協定に署名。日本政府は2016年度予算案の成立後、できるだけ早期にTPPの承認案や農業対策を盛り込んだ関連法案を成立させるシナリオを描く。

 だが、交渉を担った甘利氏が辞任し、答弁は「にわか勉強中」の石原氏が受け持つことになった。野党は交渉の経緯などを厳しく問いただす構えで、石原氏が答弁に苦慮する場面も相次ぎそうだ。

 国会審議が混乱し、TPP関連法案などの成立が大きくずれ込む事態となれば、参院選への影響も出かねない。このため、自民内からは「何とか石原大臣にのらりくらりとかわしてもらい、最後はタイミングを見計らって押し切るしかない」(幹部)といった声が出ている。

 ただ、こうした安倍政権側の姿勢に対しては、専門家などから「TPP交渉の具体的な経緯や論点について、せっかくの国会での論議が表層的なものに終始してしまうことになれば大問題だ」(みずほ総合研究所の菅原淳一・上席主任研究員)といった指摘も根強い。丁寧さを欠く国会運営を続ければ、世論の反発を招く恐れもある。

 甘利氏が去ったことで、霞が関の主要省庁幹部からは今後の政策調整への戸惑いの声もあがっている。

 甘利氏はこれまで、信頼を寄せる経済産業省幹部や内閣府幹部を軸に各省間の調整を図るスタイルを確立していた。

 菅義偉官房長官や麻生太郎副総理・財務相との調整役も果たし、安倍首相が目指す成長重視路線の先導役を演じてきた。

 石原氏に同様の役割を期待するのは難しいとの見方が広がっており、経産省幹部は「甘利さん頼みのツケが一気に回ってきた感じだ」と漏らす。

 こうした中、注目されるのは、景気回復で増えた税収の活用策に関する議論の行方だ。安倍首相は増収分を一億総活躍社会の実現に向けた関連施策などに充当したい考え。これに対し、財政規律を重視する財務省は増収分を国債発行の抑制などに使うべきとの立場で、今後、政府内の議論が本格化する。

 経済財政諮問会議を取り仕切る立場だった甘利氏は、安倍首相の意向を踏まえ、増収分を財源にした政策拡充に前向きな姿勢を示していた。その矢先での甘利氏の退場で、バトンを引き継いだ石原氏のかじ取りが試されることになりそうだ。