新日本は「成長志向に偏っていた」

 こうした点は、形の上では前進と言える。だが、東芝事件で浮き彫りになったのは、不正を見抜けない甘さと共に、企業側の強い要求に屈したと見える監査法人側の立場の弱さだ。監査をする相手は顧客でもあるという根源的な問題である。「監査の現場では、企業側から様々な圧力を受けるケースが多い。だが、それを説得し、契約解除もやむなしという態度で臨まざるを得ないケースも少なからずある」。新日本のある会計士はこう打ち明ける。だが、実際にそれが出来ていたのか。監査法人の世界では、「売上高を上げられるかどうかが法人内での出世のカギ」としばしば言われる。その言葉には、不正は許されないものの、厳格な会計処理を企業に迫り続け、契約を打ち切られると法人内での立場を失いかねない会計士の悩みもにじむ。

 辻新理事長は、監査の甘さを指摘されるに至った根本原因の1つを「(組織が)成長志向に偏っていた」とも打ち明けている。もっと監査の質を追求すべきだったという反省のようだが、今後は契約を打ち切られることがあっても、厳格な会計処理を求める会計士の評価を高くするといった明快な姿勢も示していない。

 新日本に問われるのは、仕組みの整備よりも会計士としての精神をどこまで高めていけるかなのだろう。改善計画という器はできた。だが、本当に出直せるかどうかはこれからだ。