質疑応答中、記者から「今回、ホンハイ側にリソースをかけていると公言したのは、革新機構側に『もっといい案を提示してほしい』と言うシャープからのメッセージではないのでしょうか」との質問が飛んだ。

 これに対し髙橋社長は、「大阪人的な言い方をすれば『つりあげたろか~?』って意図は・・・まったくありません」

 と笑いながらジョークで返した。

 これまでの記者会見で、髙橋社長は常に硬い表情で決算会見に挑んできた。

 「不退転の覚悟で挑みます」
 「求心力がないと言われても仕方がないかもしれません」
 「心よりお詫びします」

 辛辣な質問や自社が置かれている状況に対し、少しこわばった表情で機械的に受け答えをしてきたのが印象的だった。

 しかしこの日の顔には、これまでのような悲壮感はなかった。

 時には「革新機構とホンハイ側に出している要望が4つあります」と語り、3点述べた後に、「・・・あ、3点しか言うてないですね。4点目は・・・あ、紙を見ていいですかね」と笑いながら口にするほど余裕があった。

1つ1つ丁寧に受け答えをする髙橋社長。その表情は過去1年間の決算のなかでは最も明るかった(写真:都築 雅人)

「構造改革をやりきることが経営責任」

 決算の数字が良かったわけではない。

 2016年3月期通期の業績見通しは据え置いたものの、2015年4~12月期の連結決算は最終損益が1083億円の赤字(前年同期は71億円の赤字)、営業損益も290億円の赤字(前年同期は512億円の黒字)だった。中国市場向けのスマートフォン用液晶パネルや太陽電池の販売減少の影響が大きい。

 にもかかわらず、これまでとは明らかに異なった髙橋社長の表情。見えてきたゴールへの安堵感か、それとも、どちらに転んでも今後の道筋は明るいと確信したからなのだろうか。

 シャープの再建は「(産業革新機構を所管する)経産省の言いなり」(液晶業界関係者)と囁かれていた髙橋社長が、初めて決定権を手にしたことを喜んでいるようにも感じた。その本心やいかに。

 「構造改革をやりきることが一番の経営責任」

 何度も尋ねられた経営責任については、髙橋社長はこの日、力強くこう語った。残り1カ月、髙橋社長はどんな決断を下すか。社員、株主、そして市場が、その決断に注目している。