加えて、現在のファミリーマートが進めている中期経営計画は極めてハードルの高い内容だ。つまり3つ目の「いきなり」は、計画達成に向けて、かつてないコンビニの大改革に挑まなくてはならないということだ。

「(ファミリーマートの現在の)日商52~53万円では、目指しているゴールにはほど遠い。現在、ファミリーマートでは『600Kプロジェクト』として日商60万円を早く達成しようと、中食構造改革や物流構造改革を進めている」と中山社長は説明する。この高いハードルを、澤田氏は当初から課せられるわけだ。

 日商60万円を目指すために、ファミリーマートは現在、従来型の「コンビニ第2フェーズ」から、新たな業態である「第3フェーズ」へ進化すべきと掲げている(詳細は「ファミマ、水面下で進む改革の仕掛け人」、「ファミマ、統合のリスクをチャンスに変える」)。コンビニ経営の乏しい澤田社長は、進化した第3フェーズのコンビニの未来図を描き、形にしなくてはならない。

「玉塚に教わるつもりはない」

 澤田氏は、ライバル企業である、ローソンの玉塚元一社長と深い縁がある。

 ファーストリテイリング時代、柳井会長が「次期社長に」と打診した社長の座を、澤田氏が辞退したことで、当時同社の幹部だった玉塚社長が就いたとされる。結局、玉塚社長は数年でファーストリテイリング社長の座を解任され、澤田氏と一緒にリヴァンプを立ち上げる。その後、ローソンの新浪前社長の誘いを受け、コンビニの経営に携わるようになった。

 浅からぬ関係の2人が、9月以降、同じコンビニ業界で対峙することになるわけだ。ローソンの玉塚社長には今回のサプライズ人事を、事前に報告していたのか。そんな問いに、澤田氏はこう説明をした。

 「玉塚くんに、この話は一切していません。彼とは30年以上の付き合いだけれど、今回の件は話ができていません。これからケータイに電話がかかってくるかもしれないけれど、知らぬ存ぜぬで通そうかと思っています」

 「玉塚は僕のライバルだと思っていないんで。私はまず、先ほども申した通り、社員や加盟店オーナーの皆さんから話を聞いて、まずは学ばないといかません。だからライバルという意識よりも、まずは自分がしっかりと勉強してからでしょう」

「玉塚から教わるつもりはないが、皆さんからはしっかりとご指導してもらいたい。あまり玉塚をいじめないでください(笑)」

 あくまで、まずはコンビニ経営を「学ぶこと」が重要であると繰り返した。

 大統合の最中に「いきなり」、コンビニ経営を託されることになる澤田氏。「盟友」の玉塚氏以上に、超えなくてはならない壁は高いだろう。

■変更履歴
本文中、「伊藤忠商事の岡藤正弘社長」としていたのは、正しくは「伊藤忠商事の岡藤正広社長」。「ローソンの新浪剛前社長」としていたのは、正しくは「ローソンの新浪剛史前社長」です。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2016/02/05 9:55]