「本当はリタイアしようと思っていた」

 今回の統合の絵を描いてきたのは上田会長であり、澤田氏の起用についても意向が働いているとみるのが自然だ。統合後の経営体制について質問を受けた上田会長は、のっけから驚きの告白を始めた。自身の進退についてだ。

突然、リタイアしようと思っていたと語りだす上田会長

 「正直言いましてね、私は昨年3月をもって、ファミリーマートの経営からリタイアしようと思っておりました。で、その後、ユニーグループとの統合の話が出て、この件は過去において私が何度かユニーさんにお声がけをした経緯もあって、なぜそれが実現しなかったかという経緯も私が一番分かっています」

 「そういう中で、佐古社長や中山社長による基本合意を受けて、統合作業を進める中で、両氏からも、新しい統合会社の社長は上田がやってくれないかというような話もありました」

 「一方で、私自身もこれまでの経験を生かして、やるべきではないかという気持ちに至りました。ですから(新体制で)私が社長に就くというのは、ついこの2カ月以内に関係者の方々と話をして決めました」

 日経ビジネスが昨年12月に実施した上田会長のインタビュー(「ファミマ上田会長が激白『3位では生き残れない』」)でも、上田会長は「まず僕がリタイアするかどうかを決めないとダメだよね」と語っていた。自身の進退について迷いを重ねながら、最終的には昨年末から今年の年始あたりに決断を下したという。

 年明けには、ファミリーマートの筆頭株主である伊藤忠商事の岡藤正広社長が、社長職を続投する意向を発表した。伊藤忠では過去2代の社長が6年で交代しており、6年目を迎える岡藤社長の去就にも注目が集まっていた。筆頭株主として、ファミリーマートとユニーグループHDの統合を無条件で認めてきたわけではなく、ユニーのGMS事業の先行きなどに懸念を示してきた。そんな岡藤社長の続投が、上田会長の「リタイア断念」にも何らかの影響を及ぼしたのではないか。こうした問いに上田会長は語気を強めた。

 「伊藤忠(社長)の続投と、今回の新統合会社の人事とは、全く関係ありません」。

 今回の統合を自らのリーダーシップで進めてきたという、上田会長の自負がにじむ。

なぜ澤田氏に白羽の矢が?

 新体制で統合を主導した上田会長が、引き続き経営の指揮を執るのは理解できる。だがなぜコンビニ事業の社長に、外から経営者を連れてこなくてはならなかったのだろうか。上田会長はこう説明を続けた。

ファミリーマートの次期社長に就く澤田氏

 「今度の統合では、コンビニエンス部門が1万8000店を超える規模になっていきます。これだけフィールドが広がり、(店舗が)海外にも広がっている中で、(ファミマ現社長の)中山氏がこれを1人でマネジメントするのは相当、エネルギーがいるだろうな、と」

 「ホールディングスの一体経営についても、私を補佐しながら、中山氏にきっちりとやってもらわないといけない。ガバナンスを強化するために1人招聘しようと中山氏と話をしました」

 「中山氏と澤田氏は伊藤忠時代から同期で、その後も交流があった。澤田氏はご存知のように、小売業に造詣が深く、いろいろな会社のマネジメントもやってきています。そこで澤田氏を招聘して、コンビニ事業の社長になってもらおうとなった」

 澤田氏の名前を知る人も多いはずだ。伊藤忠出身の澤田氏は1997年、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリングに転じる。その才覚が柳井正会長兼CEOの目に止まり、翌98年には副社長に就任。「フリースブーム」の仕掛け人とされ、柳井会長からは次期社長候補と目されていたようだ。

 ファーストリテイリングを退社後、投資ファンド運営会社キアコンや、リヴァンプなどを立ち上げてきた。アイスクリームのコールド・ストーン・クリーマリー・ジャパンやクリスピー・クリーム・ドーナツ・ジャパン、ロッテリアといった飲食関連で事業の立ち上げや経営支援にも携わってきた。今年に入り、伊藤忠時代の同期の中山現社長から、澤田氏に打診をし、最終的には1月後半に、澤田氏がファミリーマート入りを決めたという。