2016年3月期に過去最大の赤字に沈む見込みの東芝。室町正志社長は再建策を練っているが、自己資本比率は危機的水準に落ち込む(写真:陶山 勉)。
東芝は2月4日、2016年3月期の業績予想を下方修正し、連結最終赤字が7100億円になる見込みだと発表した。5500億円の赤字だった従来予想から一段と損益は悪化する。営業損益の赤字幅も従来の3400億円から4300億円に拡大する。
記者会見した室町正志社長は「公表から1カ月で大幅修正したことをお詫びしたい」と陳謝したうえで、不採算事業については「最大限、今年度中に処理したい」と述べた。
同日発表した2015年4~12月期の連結決算は売上高が前年同期比6.4%減の4兆4217億円、営業損益は2295億円の赤字(前年同期は2018億円の黒字)に転落した。セグメント別に業績を分析すると、東芝が直面する苦境がさらに鮮明となる。再建に向けた注力領域と位置づける、「エネルギー事業」と「ストレージ事業」の二本柱が赤字に陥っているからだ。
半導体が減収、ハードディスクで人員削減
半導体を軸とする電子デバイス部門は、9カ月累計の売上高が前年同期比で7%減った。パソコン需要の低迷が直撃し、ストレージ事業が17%の減収。稼ぎ頭のNAND型フラッシュメモリーも、スマートフォン需要の伸び悩みなどによる「売価ダウン」(平田政善CFO)の影響で減収となった。結果、2015年10~12月期は電子デバイス部門の営業損益が154億円の赤字に転落。通期では550億円の営業赤字になる見込みだ。
これを受けて、東芝は新たにハードディスク事業の構造改革施策を発表。開発機種を絞り込むとともに、国内で約150人を削減するとした。
電力・社会インフラ部門も減収減益だった。送変電・配電・太陽光事業で482億円の減損を実施し、原子力や火力・水力なども苦戦。部門全体では9カ月累計で1026億円の営業赤字を計上した。前年同期と比べて損益は1456億円悪化した計算だ。通期でも850億円の営業赤字になる見通しである。
注力分野で稼ぐ力が弱まり、リストラ費用が追加で発生する。結果、ただでさえ傷んでいる財務状況がさらに苦しくなる。事業売却を考慮しない場合、2016年3月末の自己資本は1500億円となり、自己資本比率は2.6%にまで落ち込む見込みだ。今後、事業と財務の両面で抜本的な出直しを迫られる。
室町社長は資金繰りについて「金融機関とトップ折衝をしている」とする一方で、金融機関からは「今期中に膿を出し切りなさい」と促されていることを明かした。
そこで東芝は事業の切り売りを急いでいる。室町社長は白物家電とパソコン事業の再編について「2月末までには何らかの方向性を示したい」と表明。白物家電についてはシャープとの統合を検討してきたが、成立しない場合は「海外メーカーへの売却も検討している」ことを明らかにした。相手次第では拠点の閉鎖など追加リストラも迫られそうだ。
売却を進めている東芝メディカルシステムズについては、資本増強のための「唯一と言っていいくらいの大きな資産」(室町社長)と位置づけ、第2次入札のプロセスを進めるとした。3月末までに売却が実現すれば自己資本の目減りを抑制できるが、売却価格の目安は「報道された金額より高め」と述べるにとどめた。
一方で、システムLSIなどは「構造改革を徹底して黒字化したい」(室町社長)と発言し、事業売却については見直しているとした。
米ウエスチングハウスの減損は回避
ただし、これで悪材料出尽くしとはいかない。米原子力子会社のウエスチングハウス(WH)ののれん減損など、潜在的なリスクがくすぶり続けるからだ。
東芝は昨年10月1日を基準日として、今期の減損テストを実施。「公正価値が帳簿価額を上回っているので減損の兆候はないと判断した」(平田CFO)と説明した。だが、室町社長は「2016年1~3月期での環境変化が大きい場合は減損テストをもう一度する可能性もある」と述べた。
WHを含む原子力事業で、東芝は7514億円(昨年末時点)ののれんと固定資産を計上している。東芝メディカルが数千億円規模で売却できても、綱渡りの財務状況が今後も続くことに変わりはない。
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