「安全に対する注目度は増している。対価を払ってもらえるか注視していく」
 スズキは2月1日、主力の軽自動車「ワゴンR」を4年半ぶりに全面刷新して発売。鈴木俊宏社長は発表会見でこう述べた。

 減速時のエネルギーを利用するマイルドハイブリッド技術の搭載などで燃費性能を1リットル当たり33.4kmまで高めた一方で、安全性能をアピールする発言が随所に見られた。センサーなどの先進技術を使った安全競争は軽自動車にも広がってきた。

全面刷新した「ワゴンR」とスズキの鈴木俊宏社長
全面刷新した「ワゴンR」とスズキの鈴木俊宏社長

センサー類はトヨタと同じ独コンチネンタル製

 ワゴンRでは、単眼カメラと赤外線レーダーで車や歩行者を認識し、自動的にブレーキをかける「デュアルセンサーブレーキサポート」を軽自動車に初採用した。

 上位グレードには標準装備で、その他のグレードでは原則としてオプションとなる。誤発進防止機能やヘッドアップディスプレーなどを含む「セーフティパッケージ」のオプション価格は5万9400円から。

 デュアルセンサーブレーキサポートでは、全てのセンサー類が独コンチネンタル製。スズキはこれまで、軽自動車「スペーシア」などに日立オートモーティブシステムズ製のステレオカメラを積んでいた。今年1月に発売した小型車「スイフト」とワゴンRから、コンチネンタル製に切り替えた。

 コンチネンタルのセンサーは、トヨタ自動車の衝突回避支援回避パッケージ「セーフティセンスC」でも使われている。スズキの担当エンジニアは「(コンチネンタル製センサーは)コストが魅力だ」と明かす。トヨタの売れ筋車種である「アクア」や「シエンタ」「カローラ」「ヴィッツ」などに搭載されたことで、量産効果が出ているとみられる。

 スズキが日立オートモーティブからコンチネンタルに切り替えた理由はコストだけではない。コンチネンタルのセンサーシステムは小型なのがもう一つの魅力だったという。「ステレオカメラは(比較的大きいので)室内空間が犠牲になる。なるべくユーザーに広く感じてもらいたかった」。ワゴンRの開発担当者である四輪商品第一部の新美大輔氏はこう言う。

 デュアルセンサーブレーキサポートの開発に当たっては、スズキがソフトウェアの共同開発をコンチネンタルに提案。開発初期から、歩行者検知の機能を盛り込むことを決めていた。トヨタのセーフティセンスCには歩行者検知機能は搭載されていない。ほぼ同一のハードウェアを使っているが、ソフトウェアの進化で機能を追加したわけだ。

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