このところ市場では、株式や原油など複数の市場で先物を売買する商品投資顧問(CTA)が商いを活発化させている。コンピューターで相場の方向性を予測し注文を自動で出す。相場が大きく動くときは値動きを増幅しやすく、今回のマイナス金利導入はCTAにとって格好の稼ぎ時に映っている。当面は不安定な値動きが続く中、マイナス金利が金融市場に落ち着きを取り戻す救世主となり、実体経済を底上げする特効薬とはなりにくい地合いだ。

 折しも、国内経済の先行きにも不透明感が漂う。日銀が29日発表した展望リポートでは、実質成長率と消費者物価指数の見通しに加え、9人いる政策委員ごとに上下双方のリスク判断を示した。〇は上下にリスクが均衡、△は上振れの可能性が大きく、▼は下振れのリスクが大きいという評価になる。

見通しにも自信のなさが浮き彫りに

 まず成長率を見ると、2015年度は〇8人、▼1人。2016年度は〇6人、△ゼロ、▼3人。2017年度は〇4人、▼5人だ。前回10月時点の展望リポートでは2015年度について〇5人、▼4人だったから、政策委員の大半はマイナス金利の導入により、国内経済は少なくとも今年3月末までは一定の効果を持つと見ている。それでも、2016年度以降は前回と大差のない結果で、政策委員の自信のなさが浮き彫りになる。

 物価はどうか。政策委員の見通しは2015年度こそ〇6人、▼2人と強気に傾いているが、2016年度は〇6人、△1人、▼2人、2017年度に至っては〇5人、△ゼロ、▼4人と渋い。2015年度は成長率が従来の1.2%から1.1%に小幅に下方修正され、物価は0.1%で据え置かれたが、それでも達成は難しいと見ている政策委員が少なからずいることを示している。日銀は消費者物価が目標の2%に達する時期を「2016年度後半ごろ」から「2017年度前半ごろ」に先送りした。

 マイナス金利の導入が9人いる政策委員のうち賛成5人、反対4人と僅差で決まったことからも、政策の手詰まり感は浮き彫りになる。

 今回、日銀が導入を決めた「マイナス金利」は、金融機関から日銀の当座預金で預かっている一部の資金につけている金利をマイナスに引き下げる政策だ。金融機関が日銀に預けている当座預金の残高は、去年12月から今月にかけての平均で252兆円ほど。このうち大半に0.1%の金利が付いている。

 今後、法律で定められた資金を超えて預けてくる金利をマイナスに引き下げれば、金融機関は日銀に手数料を支払って資金を預けることになるため、より積極的に資金を貸し出しなどに振り向けることを、日銀は期待している。

 ただ金融市場や展望リポートからは、その効果に確信を持てない様子が伝わってくる。今後、日銀は長期国債の買入れ増額など、次の一手が限られる可能性がある。マイナス金利という奇策には中央銀行を追い込む逆説的な側面が潜むことにも注意が必要だろう。

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