ところが、日銀とECBの政策には、大きな違いがある。そこは要注意である。ECBは時限的に、2017年3月まで長期国債などの資産買入れをするという政策ツールを使い、同時に当座預金のマイナス金利を併用して短期・中期ゾーンの利回りを押し下げる二段構えにしている。これならば、マイナス金利に過度に依存せずに、短期から長期にわたってイールドカーブ(利回り曲線)は低下する。

追加緩和予想を維持するためのマイナス金利

 一方、日銀は、長期国債の買入れはもう既に巨大化して増やせなくなっているので、追加的な長期国債の買入れをせずに、マイナス金利で短期・中期ゾーンの金利を押し下げようということになる。日銀のマイナス金利は、先々までマイナス状態が続きそうだという期待形成によって、長期ゾーンの金利を押し下げる。これは運用難が極端なまでに長期化する予想を強めることで、より長いところまで影響力を与えようという悲愴な未来像の浸透でもある。

 ECBが量的拡大効果に余力を残している一方、日銀は量的拡大ができない分、マイナス金利への依存度が強まる。今後もマイナス金利の幅が広がると、資産運用への弊害も大きくなる。円安効果は米FRB(連邦準備理事会)の政策で弱まったり、強まったりするが、一方の弊害はずっと続くことになろう。

 ところで、なぜ、今、マイナス金利の導入なのであろうか。おそらく、それは日銀が追加緩和予想を延長できるツールを持ちたいからだろう。もしも、ここで長期国債の買入れを80兆円から100兆円へと増やしていたならば、どうだっただろうか。

 筆者の予想では、その効果は短期的に終わっていた。日銀が長期国債を100兆円まで増やすと、その後が続きそうにない。追加緩和予想はかえって弱まってしまう。すると、2016年3月以降にFRBが追加利上げを行おうとする場合に巻き起こる金融市場の波乱によって、今回の金融緩和は飲み込まれてしまう。

 一方、今回のように、マイナス金利を導入すれば、今後もマイナス金利幅をより深くしていくという観測が成り立つ。そうした仕組みであれば、日銀は期待形成の作用を演出できる。

 今後、マイナス金利はどのくらいの幅まで拡大するのだろうか。先に述べた通り、日銀が意識しているのはECBである。すでにECBは当座預金金利を▲0.3%まで引き下げている。ドイツの債券利回りは短い期間では、日本以上にマイナス金利の幅が大きくなっている(図表2)。

(図表2)日本とドイツのイールドカーブ
出所:日経QUICK

 今回、日銀の付利金利を▲0.1%にしても、将来、経済物価情勢が悪化していった場合、欧州並みに付利のマイナス幅を引き下げる可能性が感じられる。おそらく、今回、日銀は初めの一歩として、マイナス金利の道を開いておいて、将来のリスクに備えて、欧州を追い駆けることができる体制をつくったのだろう。