ただし、不満の声も上がっている。補償の計算に使うNEMの基準価格を決める際、NEMの売買停止時点から補償発表時点までの価格を出来高に応じて加重平均する、としたためだ。この期間に不正送金の発表を受けてNEMの価格は大幅に下落していたため、補償総額が当初被害額としていた580億円から120億円も少なくなった。「NEMそのものか、不正送金時点の価格で計算すべきだ」と都内在住の利用者は指摘する。
補償はコインチェックの仮想通貨取引口座に日本円を返金する形で実施するが、時期については「現在検討中」(担当者)という。今回の問題を受けてコインチェックは日本円を含むすべての取扱通貨の出金を一時停止しており、顧客の資産は事実上凍結された状態だ。この出金制限の解除時期については「メドが立ち次第順次」(同)としている。
コインチェックはスマートフォンからの使い勝手の良さを実現する技術力や、ビットコイン以外の仮想通貨のラインナップが充実していることへの評価が高かった。そのため仮想通貨の初心者との親和性が高く、積極的な広告展開と相まって利用者を拡大してきた。
審査の厳格化は必至
今後はその状況が反転する。顧客の資産保全という基本が不安視される事態となったため、預かり資産の減少や顧客離れは避けられないだろう。そこに補償金の支払い負担や訴訟リスクがのしかかる。また、コインチェックは金融庁に仮想通貨交換業者として登録を申請しているがまだ認められず、現在は「みなし業者」として営業を続けている状態だ。今回の事案を受けて審査が厳格化するのは必至で、仮想通貨の性質によっては取り扱い停止を迫られるものが出てくる可能性がある。
世界に先駆けて法律で仮想通貨を定義するなど、仮想通貨ビジネスを健全な形で発展させようとしてきた日本。ようやく仮想通貨に対する認知度が高まってきたところで発生した今回の事案は、仮想通貨への信頼を揺るがそうとしている。
和田晃一良社長は27歳、大塚雄介COOは37歳。若手経営者2人を待ち受ける道は険しいが、顧客に正対する姿勢を示そうと、懸命にもがいているように見える。日本の仮想通貨市場の裾野を広げてきたコインチェックは、信頼回復を成し遂げられるのか。その行く末を多くの人が固唾を呑んで見守っている。
記事中、コインチェックの正しい資本金は9200万円でした。お詫びして訂正致します。本文は修正済みです [2018/01/29 16:15]
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