プラスチック基板を使った液晶パネルは、JDIのほかシャープなどのパネルメーカーもかつて開発していた。しかし、技術的なハードルが高く開発費がかかるうえ、最終的なアプリケーションが見えにくく顧客からのニーズも少なかったため、実現することはなかった。
潮目が大きく変わるキッカケとなったのは、有機ELパネルの台頭だ。スマホ市場が頭打ちする中、スマホの革新性を「フレキシブルさ」に求めるメーカーが急増、有機ELがポスト液晶パネルとして一気に台頭した。
JDIでは昨年後半から本格的にフレキシブル液晶の開発に着手。11月にプロジェクトチームが結成され量産化に向けた開発を加速させてきた。
目指すはiPhoneの2018年モデルへの採用
最大の目標は米アップルのiPhoneに採用されることだ。取引先関係者によるとアップルの元々の計画では、2017年モデルで一部機種でのみ有機ELパネルを使う。2018年には半数以上を、2019年にはほぼ全部を有機ELに切り換えることを見込んでいた。
しかし、韓国サムスンディスプレー以外のパネルメーカーの量産化が遅れ、寿命や精細度などの面で課題が残っていること、最近になって液晶パネルを見直す動きも出始めている。有機EL開発に苦戦しているJDIにとって、今回のフレキシブル液晶をアップルに納入することの意味は大きい。
JDIの有賀社長はこの日、具体的な顧客について言及はしなかった。だが、「顧客がいない状態で『量産を目指す』とは言わない」とし、現時点でメーカー側から引き合いがあることを匂わせた。
技術のJDIを改めて強調
技術展ではほかにも、透過率の高いディスプレーや空中に映像を表示できる技術などを公開。現在開発中の有機ELパネルもあわせて公開した。フレキシブル液晶を主力製品として今後営業攻勢をかけていくが、スマホ向け商材の開拓も待ったなしだ。「ディスプレーメーカーとして、顧客がどんなことを要望しても応じられるように、あらゆる商材を揃えておく」(有賀社長)と強調した。
パネル業界では先日、台湾の鴻海精密工業とシャープが米国での液晶パネル生産の検討を表明したばかり。25日の技術展の質疑応答でJDIの対応について聞かれた有賀社長は、「我々は米国で作ることは考えていない」と述べた。
資金力や生産の規模で攻勢をかける鴻海シャープ連合と、技術で対抗しようとアピールするJDI。液晶市場で攻勢をかける両社だが、その手法は真逆だ。中国陣営の巨大工場の立ち上がりや、韓国勢の有機EL攻勢など話題の多い2017年以降のディスプレー業界。シャープとJDIの明暗は今後くっきりと分かれるかもしれない。
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