「記者の仕事がなくなる」というイノベーションのジレンマを前に、あえて一歩先へと踏み出した理由や狙いとは何か。プロジェクトを担当したデジタル編成局編成部の関根晋作氏は、こう語る。

 「本プロジェクトの真の狙いは、人間の記者に、本来やるべき仕事に集中してもらうという点にあります。対象が約3600社もある上場企業の決算記事をすべて人手でやっていては、カバーしきれません。同時に電子版の普及で記者の負担は増大しており、付加価値の高い記事の質を高めるためにも、一部作業をAI化することが不可欠と考えました」

 これまで日経では、主に証券部や子会社の日経QUICKニュース社(NQN)の記者が決算の速報記事を担当していた。決算サマリーのサービスがまだベータ版(試用版)ということもあり、現状は記者の既存業務に変更はないというが、今後、編集の現場を中心に検討を進めていくという。

「進化の過程を見ていただきたい」

 関根氏が「出来上がった記事をご覧になってもらえば分かりますが、AI記者による記事品質は、まだまだ人間にとって代わるとは言いがたい」と話すように、日本語表現の違和感など多少の粗も残る。

 例えば、冒頭に紹介したLINE決算の記事中にある要因部分は、「純利益は、MixRadio事業の終了に伴う解雇費用などから構成される非継続事業に係る純損失の計上が影響した」とあり、よく読めば分かるが、頭に入りにくい文章だ。

 それでもサービスの公開に踏み切ったのは、「お客様に進化の過程を見ていただきたい」(日経幹部)との思いからという。AIがどう日経記者の働き方を変えていくのか。壮大な実験が始まった。