日本企業はこれまで、中国人の買い物を促す取り組みとして「銀聯」など中国発行のクレジットカードへの対応を進めてきた。これに対し、アリペイの特徴はアプリ経由で来店をダイレクトに促せる点にある。

 「アリペイは『ディスカバリー(発見)』のプラットフォームになる」。23日、玉塚ローソンCEOとともに記者会見に出席したアント・フィナンシャルのドウグラス・フィーギン上級副総裁は胸を張った。

 スマホアプリは機能を設計するうえでの自由度が高いため、単なる決済手段だけでなく、観光やショッピングの道案内役にもなる。「中国人観光客が日本でホテルの部屋にいるときに、乾電池がないことに気づいたとする。アリペイのアプリを使えば、その場でアリペイ決済に対応している近くのローソンを探すことができる」(フィーギン氏)

アプリを通じたローソン店舗への誘導も可能になる(アプリの画面イメージ)
アプリを通じたローソン店舗への誘導も可能になる(アプリの画面イメージ)

 中国人にとっては、クレジットカードのように「来店したら、たまたまその店が馴染みの支払い方法に対応していた」ではなく、「馴染みの支払いシステムに対応しているなら、そのお店に行こう」という来店の動機になるということだ。

 また、支払い情報が店舗側に残るため、将来的には帰国後の中国人に商品情報を配信するといったアプローチも可能になる。ローソンにとっては、中国で展開する約900の現地店舗への誘導も視野に入る。クレジットカード対応にはない魅力が、アリペイ導入にはあると言えるのだ。

いろんな意味で学ばせていただきたい

 モバイル決済先進国である中国大手との提携。その効果は、単に中国人観光客の来店を誘致するだけにとどまらない。

AR(拡張現実)を活用した機能も盛り込む考えだ
AR(拡張現実)を活用した機能も盛り込む考えだ

 ローソンは現在、銀行を設立して自ら金融事業に参入する計画を進めている。玉塚CEOは「中国はキャッシュからクレジットカードも飛び越して、一気にモバイル決済が普及した。こうした状況から、どんな便利な使い方を開発できるのか。いろんな意味で学ばせていただくことがたくさんあると思う」と話した。

 コンビニ最大手・セブンイレブンのセブン銀行設立から15年以上遅れての参入に、業界では「いまさら始めても…」と冷めた声も聞かれるローソンバンク構想。アリペイは、ローソンが今後日本式のフィンテックサービスを開発していく上で、強力な“家庭教師”にもなり得るだろう。

 アップルの「アップルペイ」、グーグルの「アンドロイド・ペイ」といった米国発のサービスをはじめとして、日本では楽天の「楽天ペイ」にLINEの「LINEペイ」、中国国内でも通話アプリ発の「WeChatペイ」――。モバイル決済は大手の参入が相次ぎ、まさに群雄割拠という言葉がふさわしい局面を迎えている。

 小売り企業との提携などを通じ、スマホ決済各社は激しい陣取り争いを繰り広げている。ローソンによるアリペイの導入は、国内スマホ決済業界に広く影響を及ぼしそうだ。