台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業とシャープは、米国と中国で相次ぎ液晶パネル工場を建設することを明らかにした。米国には8000億円を、中国には1兆円を投じてそれぞれ新工場を建設する計画だ。関係者によるとインドへの工場建設も検討しているという。液晶パネルの市況が不透明であるにも関わらず、強気の姿勢を緩めない鴻海の郭台銘董事長。その大型投資に勝算はあるのか。

トランプ米大統領の意向に沿う決定

鴻海精密工業の郭台銘董事長(左)。シャープ再建のために社長として送り込んだ戴正呉氏(右)と共に台湾で会見を開いた(写真:ロイター/アフロ、撮影日は2016年6月)

 米国工場の建設については1月22日、鴻海がシャープと共同で開催した台湾での記者会見で発表した。シャープと共同で投資するほか、主要顧客でもある米アップルも出資する見通しだ。

 中国・広州への工場の建設は昨年末に既に表明している。鴻海とシャープが共同で出資する堺ディスプレイプロダクト(SDP)が主体となり、2018年秋に稼働を開始する計画だ。完成すれば世界最大級の液晶工場となる。

 昨年シャープを傘下に収め液晶市場で攻勢をかけたい郭董事長だが、相次ぐ巨額投資の表明は米国と中国の両政府への配慮が透けて見える。パネル部材メーカーの関係者は米国工場について、「地価、人件費、インフラ面などを総合的に考えると中国生産の倍以上はコストがかかる。実現可能性はゼロだと考えていた」と驚きを隠さない。

 そんな非現実な地での生産を後押ししたのは、トランプ大統領の存在だろう。「米国での生産は以前から検討していた」と話す郭氏だが、製造業の米国回帰を訴えるトランプ大統領を意識して米国生産を表明したのは自明だ。投資計画は昨年12月、トランプ氏に直接伝えていたという。

 中国でも地方政府が進出企業に補助金を交付しており、製造業を中心に積極的な誘致を進めている。鴻海が広州市で計画している1兆円規模の工場投資の一部も、地元政府から補助金を受け取る見通しだ。もともと郭氏と中国政府の関係は近く、高付加価値な製造業の活性化を図りたい中国政府の意向に沿った形での実現となった。

 しかし、米国と中国で工場を建設するリスクは高いと言わざるを得ない。