安倍首相は2月前半で調整しているトランプ氏との首脳会談で日米の同盟関係の重要性を再確認し、TPPについても米の国益にかなうとして引き続き再考を促す方針だ。

 安倍首相は周辺に「TPPの本質は単に経済面だけでなく、アジア太平洋地域での安保強化だ。中国に対抗するうえで重要な意味合いを持つということもしっかり伝えたい」と語っている。

試される安倍首相のかじ取り

 当面、トランプ氏の一挙手一投足に各国も市場も振り回される展開が続くことになるが、先行きの大きなリスク要因となりそうなのがトランプ氏の不人気ぶりだ。

 トランプ氏の就任前支持率は軒並み40%程度にとどまり過去最低水準。全米ばかりか世界各国で反トランプ派のデモが相次ぐなど異例の事態が続いている。

 「安倍首相が積極的な外交を展開し、真珠湾訪問や韓国との慰安婦問題での合意など政治決断が可能になったのも政権基盤が安定しているからこそ。世論の支持を欠いた政権はどうしても政策の推進力を失ってしまうのが常だ」。自民のベテラン議員はこう指摘する。

 時の為政者が国内の不満を和らげ、支持率を回復する手立てとして対外強硬路線を選択しがちなことは枚挙にいとまがない。

 仮に自らが掲げた政策にブレーキが掛かり、米国内の期待が剥げ落ちれば、保護主義に一層傾斜し、2国間交渉で幅広い分野の「取引」に乗り出そうとする──。トランプ氏のそんな近未来像は決して絵空事ではないかもしれない。

 トランプ政権の通商政策、外交・安保政策、為替政策などはしばらく見通しにくい。日本政治も経済も、そして企業活動も不確実性の高まりに翻弄されることは確実だ。

 そうした状況下で大切なのは、自分たちでやるべきことを粛々と進め、あらゆるリスクに即応できる基盤づくりだろう。

 トランプ氏に自由貿易体制や経済連携の重要性を示し、TPPに回帰させるためにも、日米同盟関係の重要性を再確認するとともに、EU(欧州連合)とのEPA(経済連携協定)交渉の大枠合意や日中韓印などが参加するRCEP(東アジア地域包括的経済連携)の交渉加速を急ぐことが欠かせない。

 海外要因のショックに耐えうる国内経済の持続的な成長に向け、構造改革を着実に進めることも重要だ。

 今後もフランス大統領選など国際情勢の不安定化につながるイベントが相次ぐ。世界有数の安定政権を維持する安倍首相のかじ取りが試される一年となりそうだ。