その一方で、政府・自民党内では「ほぼ想定内の動きで一喜一憂すべきではない」(安倍首相に近い自民党議員)などと冷静に受け止める声も挙がっている。

 外務省幹部は「当面はトランプ政権の出方を見極めるのが大事」と語る。

「実害」は先のこと

 トランプ政権の本格稼働まで一定の時間がかかるうえ、今回トランプ政権が打ち出した保護主義的な政策方針で直ちに日本経済や企業が被害を受けるわけではないことが主な理由だ。

 「NAFTAについてはカナダもメキシコも再交渉に応じる姿勢を示しており、結果が出るまでは現状に変化はない。TPPについても未発効である以上、現時点で直ちに実害が生じるものではない」

 通商政策が専門のみずほ総合研究所の菅原淳一主席研究員もこうした見方に同調する。

 さらにトランプ氏は就任演説や政策方針で中国を名指しした批判は避け、為替操作国指定も見送っている。

 こうした状況を踏まえると、トランプ政権が発足早々に打ち出した一連の施策については「支持層向けのメッセージと現実的対応のバランスに腐心し、よく練られたものだ」(政府関係者)との見方が説得力を持つと言えそうだ。

 菅原氏はトランプ政権の当面の出方として、特に中国製品を念頭に「アンチダンピング(不当廉売)措置」など世界貿易機関(WTO)協定上認められている貿易救済措置や、紛争処理への申し立ての積極的な活用などで実利を取りにくる可能性があると指摘する。

 もちろん、トランプ政権がこうした「穏当な手段」を採用した場合でも、米中間の貿易摩擦が激化すれば日本経済への直接的・間接的な影響が現実味を帯びる。トランプ政権がいずれその矛先を日本に向けてくる可能性もある。

 トランプ氏は最初の外国首脳との会談にメイ英首相を選んだ。背景には米英のFTA(自由貿易協定)交渉を加速させるなど今後、2国間での貿易自由化交渉を重視する狙いが透ける。

 このため日本政府内では、トランプ政権がTPPに代えて日米2国間のFTA交渉を打診してくることへの警戒感が高まっている。日本が守る立場の農産物についてTPPより厳しい自由化要求を突き付けられることは必至で、かつての日米貿易摩擦の再来を懸念する見方も根強い。