日本にとってとりわけ重要なのは、起こりうる米国と中国の貿易摩擦だ。

 トランプ政権の1年目、両者の緊張関係は北朝鮮に対する交渉と協力によって抑えられていた。だが、中国の知的財産侵害に対する通商法301条の調査結果は遠からず出る見込みだ。その報告は中国企業に関税を課すトリガーになるかもしれず、そうなれば北京は米国のテック企業や農産物の輸出業者に報復措置を取る恐れがある。

 両国の利害関係は十分にあるので純然たる貿易戦争は始まりそうもないが、トランプ大統領を抑制している穏健派のアドバイザーが政権を去る可能性もある。大統領の「反中国」という直感が2018年に首をもたげてくるかもしれない。

大統領に迫りくる2018年の脅威

 2018年にトランプ大統領が立法面で何ができるかという点には曖昧なところが残っている。場合によっては共和党に相反するような動きもあるかもしれない。

 トランプ大統領は2018年初めにインフラ投資に関する計画を進めると語っている。だが、共和党は大規模な支出につながる政策を承認することに関心はなさそうだ。また、オバマケアの撤廃に再挑戦することにも関心を示しているが、共和党の議会指導部は中間選挙前に党を割るようなテーマに気乗りではない。

 ライアン下院議長は社会保障や医療制度の改革を長期的に推し進めようとしているが、トランプ大統領は選挙期間中、そういったプログラムのカットはしないと繰り返し述べている。

 可能性が高いのは、立法面での活動がなくなることだ。移民と教育に関して小規模な動きはでるだろうが、大きなイニシアチブはほとんどなくなる。

 2016年の大統領選におけるトランプ陣営とロシアとのつながりを調べているロバート・モラー特別検察官はホワイトハウスを脅かしている。選対の本部長だったポール・マナフォート氏は海外でのロビー活動に関して虚偽の説明をした疑いで10月後半に起訴された。彼は今後、新たな証言を迫られる可能性が高い。

 また、前国家安全保障担当補佐官で大統領の友人だったマイケル・フリン氏が捜査に協力すると発表している。これはトランプ大統領にとって危険だ。フリン氏は大統領を失脚させる可能性がある2つの取り調べに直接関わっている。

 近い将来という意味で言えばトランプ大統領は安全だ。ホワイトハウスにいる間に刑事責任を問われて起訴される可能性は低い。共和党は議会によるいかなる監視からも大統領を守る意思を持っているようだ。義理の息子のジャレッド・クシュナー氏など親族を含めて。

 もっとも、FBIのコミー長官を解任したように、トランプ大統領の衝動的なリアクションが長期的にはダメージを与えるかもしれない。仮に、モラー特別検察官を解任すれば、トランプ大統領の状況は悪化するだけだろう。

 トランプ大統領を弾劾するには議会が動く必要がある。政権の内幕を描きベストセラーになったマイケル・ウォルフ氏の『Fire and Fury』でも話題になっているように、様々な不安があるにもかかわらず、議会共和党は大統領を守り続けている。それはトランプ大統領が自分たちよりも支持者に人気があると分かっているからだ。

 だが、共和党による議会のコントロールは2018年の中間選挙後に変わる可能性がある。仮に民主党が上下両院の多数派を占めれば、トランプ大統領の弾劾も可能になる。民主党が上下両院を支配するというのはまだ可能性の低いシナリオだが、トランプ大統領の不人気が可能性を高めている。民主党が下院の多数派を占めるのには25議席が必要だ。これは困難だが不可能ではない。一方で上院はより険しい道のりだ。昨年の大統領選でトランプ大統領が勝利した州のうち、民主党の上院議員が再選に臨む選挙区は10あるが、その中で民主党は2議席を取らなければならない。上下両院のねじれというのが最も可能性のあるシナリオだ。

2018年の新常態

 全体として、2018年は2017年と同じような年になるだろう。ただ、トランプ大統領に対する期待感は変化し、ワシントンにおける“New Normal”が醸成されている。

 トランプ大統領のスタイルは今ほどには報道価値がなくなるかもしれない。2018年は中間選挙モードで大半が費やされるだろうが、北朝鮮問題の進展やモラー特別検察官の調査が2018年のトランプ政権に劇的な影響を及ぼしうる。ワシントンを変えるという過剰な期待はもはや新常態ではない。企業経営者はその状況に対応しなければならない。

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