税制改革法案が年末に署名された結果、法人税の大幅な引き下げやレパトリ減税(企業が海外に持つ利益の本国還流にかかる税金の減税)が可能になった。同様に、大半の個人や非公開会社に対する減税、富裕層に対する不釣り合いな恩恵も与えている。

 支持者や献金家、さらに大統領自身の圧力にさらされた共和党議員は政策の中身よりも、税制改正を実現させるという政治的な義務を優先させた。税制改革の成功によって、共和党は2018年の中間選挙に向けて大きな実績を手に入れたことは間違いないが、共和党を取り巻く厳しい政治的環境が改善する可能性は低そうだ。

 それ以外の国内政策に関して言うと実績はまちまちだ。

 1兆ドルのインフラ投資計画は共和党の反対によって法案になる可能性は極めて低い。トランプ大統領は米国に雇用をもたらすとツイッターで盛んに喧伝してきたが、彼が言及した数字は実現していない。

 「メキシコ国境の壁」についても議会は予算案に建設コストを盛り込むことを拒否している。トランプ政権は不法移民の国外退去を増加させる一方、物議を醸した大統領令によってイスラム教徒が多数派を占める特定の国の移民をターゲットにしている。

 議会を通して法案にする必要のない分野を見ると、トランプ大統領が挙げている成果は多い。オバマ政権の時に導入された規制は多くの業界に影響を与えたが、トランプ大統領は高官の任命を通して規制の緩和や撤廃を進めている。もっとも、その恩恵は金融セクターや石油・ガス、教育サービスなど特定の業界の企業に偏っている。

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気まぐれなスタイルは米国の外交政策をひっくり返す

 伝統的な共和党の政策を継続している国内政策とは異なり、トランプ大統領は伝統的な外交政策の多くと決別している。

 オバマ前大統領は無条件の支援で同盟国を安心させたが、トランプ大統領は同盟国の負担が少なすぎるとして頻繁に批判している。第2次大戦後、米国は国際機関によるリベラルな国際秩序を重視してきたが、トランプ大統領が注力しているのは取引関係に基づく2国間関係だ。

 さらに、トランプ大統領は人権の代弁者という伝統的な役割を放棄する一方、外国の指導者とのプライベートな交渉を好む。予算カットや外交官を過小評価することで国防総省に国務省以上の権限を与える半面、「北朝鮮との交渉は時間の無駄」だとティラーソン国務長官に対して警告している。

 伝統の逸脱という点では北朝鮮政策を超えるものはないだろう。これまでの大統領は北朝鮮の“口撃”は同国に対処する一部であり、安定のために無視するということを理解していた。ところが、トランプ大統領は“fire and fury(炎と怒り)”と脅した後に、金正恩・朝鮮労働党委員長のことを「小さなロケット野郎」などとツイートしている。

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